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今までずっと、私は席替えで一番後ろの席以外座ったことがなかった。目はそんなに悪くないから支障はない。むしろ一番後ろの席が好きだ。元々部屋の端っこが好きな私にとって落ち着く場所だし、この教室全体を見ていられる。
後ろから見ていると、前に座るクラス全員の様子が見れる。黒板の文字を必死にノートに写していたり、寝ていたり、携帯をいじっていたり…そんな姿も、一目で分かってしまう。
だけど最近、同じクラスの倉間君の後ろ姿ばかり追うようになってしまった。友だちに相談してみたら「それって倉間君のこと好きなんじゃない?」って。恥ずかしい、でも多分そうなんだなぁって納得してる自分がいる。
私、知らないうちに倉間君のこと好きになってみたい。
そんなことを自覚して、事件は起こった。





「嘘…」
「何だよ、文句あるか?」
「ななないです!」
「じゃあ別になんだっていいだろ」


久しぶりの席替え。私はまた、一番後ろの席になった。また同じ風景、見渡せる教室。だけど隣に倉間君。どうしてこうなったの。
そりゃ、くじだから全て運で決まったことだけど、あまりにも急じゃないのかな。どうしようどうしよう。今度から隣に倉間君がいて授業受ける。む、無理かもしれない。
いつもは背中を見てるだけでも十分だったのに、今度は横!顔も見られる、会話も出来る。そんな手の届くところに、倉間君がいる。


「さっきから何じろじろ見てんだよ」
「な、何も」
「…あっそ、」
「(どどどどうしよう)」


授業中、私は自分の顔が赤くないかが気になって仕方なかった。友だちはそれを見て笑ってたけど。どさくさに紛れて、告っちゃえば?なんて。そんなこと出来ないよ。好きっていうその一言が、私には言えない。
隣にいるだけで、それだけで、私は幸せなのかもしれない。



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