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ユウキ君は気まぐれだった。突然何か行ったり、何か行動したり。今日の場合は「ちょっと外行ってくる」と残し、部屋を出ていってしまった。さっきまで普通にお喋りしていたというのに。一体どうしてしまったんだユウキ君。
慌てて後を追いかけるけど、そこにはもうユウキ君の姿はない。いやいや、いなくなるの早すぎません?走ったとしても、不自然だ。
だけど悩みは直ぐに解消された。頭上から物音が聞こえてきたから。どうやらユウキ君は屋根に登ったみたい。

「ユウキくーん。どうしたの?」
「…」

私も同じように屋根に登ってみる。ユウキ君は振り向かないで、無言だけを返してきた。夕陽の光が直接当たって、この場所は眩しい。

「ユウキ君?」
「…お前、何で登ってきたんだよ」
「え、だって気になるじゃん」
「あっそ」

あれ、何だか不機嫌なご様子だ。でも私、何もしてないよ。ユウキ君の気に障るようなことしてないんだけど。だから、どうしてそんなトゲのあるような言葉を放つのか、分からないんだけど。

「だって、ずっと一緒にいなきゃいけない訳じゃないだろ」
「…あ、ごめんね」
「別にいいけどさ。何か…重たい感じがする」
「だから、ごめんって」

要するにあれだ。私は求めすぎなんでしょう?ユウキ君と付き合ってちょっと経つけど、私は結構ユウキ君の家に入り浸っている。なんでかって聞かれたら、一緒にいたいからとしか答えることが出来ない。だけどそれが、ユウキ君には重かったと。

「えっと、今度から回数を減らします」
「は?いや、別に俺は…」
「もう何も言わなくていいよ、分かってます。私がやり過ぎました。反省してます」
「別に来てくれることは嬉しいよ」

少しだけ拗ねていた私の心は、その言葉が気になって仕方なかった。じゃあ何が重たいって言うの。ユウキ君って不器用なのかな。

「名前が来てくれることは嬉しいけど、俺が追いつかない」
「ん、どういうこと?」
「一緒にいたいっていう気持ちは分かるけど、恥ずかしいっていうか…」
「な、何それ」

その意外な返答に抑えられず笑みをこぼす。ユウキ君はちょっとだけ呆れて「何で笑ってんだよ…」と言ってるけどね。だって、あまりにも意外なんだもん。
ユウキ君でも、恥ずかしいことはあるって分かったよ。もちろん、私は恥ずかしいっていう感情を乗り越えて、君に会いに来てるけど。
でも何だろう。そんな風にユウキ君が喋ってくれるってことも珍しい気がする。だからこんなにも笑っていられるのかな。



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