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大きな音が、駅のホーム内を駆けめぐっていた。電車を降りると人の波に流され少しだけ歩いていく。本当は、まだ家に帰る気もないけど、部活は終わったし習い事があるわけじゃない。このまま真っ直ぐ帰るのがきっと一番の方法だろう。オレンジ色のきれいな夕陽が照らす中、見覚えのある人影が見えた。自分の目を疑い、瞬きをしてからもう一度同じ場所を見ている。うん、確かに虎丸君だ。間違いない。

虎丸君とはどういう関係だなんて、最近考えることが多かった。わたしはめでたく高校生となり、今じゃ少し辛い通学をしている。比べ虎丸君は憧れていた雷門中の3年生ではなかっただろうか。最上級生になったとか何とか言って、4月の間緊張の色に染められた目を見たのが覚えている最後の想い出。最近全然会ってないから、忘れてしまったのか。仕方ない、だって色々忙しいんだもの。

「あ、あの、虎丸君、だよね?こんなところで何してるの?」
「名前さん!やっと帰ってきたー遅いですよ!」
「え、えぇ?わたし、何か約束でもしてたっけ?」
「いいえ、してませんよ」
「なら、何で?」

ベンチに座っていた虎丸君はひとまず立ち上がると「歩きながら話しましょうよ」と促す。駅を出ての帰り道、話すのは本当に久しぶりだ。当たり障りのない質問を投げかけ、会話は弾み出す。「最近学校どう?3年生だよね」「名前さんこそ、新しい高校生活はどうですか?」「まぁまぁだよーなかなか楽しいしね。虎丸君はどう?サッカー楽しい?」「はい、新しく部員も入ってきましたしね!」「そっか」……前々からの印象は変わっていない。人懐っこい雰囲気はわたしの気持ちを幾分か和ませてくれる。

そういえば、どうして駅のホームにいたの?
思いついた質問が声に出てしまった。でも多分、さっきからずっと聞いてみたい質問だったろう。だって虎丸君は駅で移動することなんて滅多にないし、だからあの場所にいた理由が分からない。わたしを見るなり、帰りましょうと言ってきたんだし、少なくともわたしに何か用があったのかと思ってしまう。興味本意の質問に、虎丸君が笑った。

「何でだと思いますー?」
「え、分かんないよそんなの。教えてよ」
「少しは考えてくださいよ」
「嫌だよ、めんどくさいもん。教えてよー虎丸くーん」
「……普通に名前さんに会いたかったらですよ!」

元気のいい声だった。一瞬思考が停止したけれど、直ぐに嬉しさに包まれていく。そうか、そうか。会いたいからなんて単純で、でも真っ直ぐな想いからあの場所にきてくれたというのか。恥ずかしいけど、嬉しかった。

「わたしも久しぶりに虎丸君に会えて嬉しいよ。ありがとう」
「学校違うからなかなか会えませんけど、今日みたいにときどき行ってもいいですか?」
「うん、いいよ」

珍しく下を向いて歩いた。コンクリートの道路には、わたしと次いでに虎丸君の影が黒く伸びている。ひっつきそうで、でも重なることはない。いいね、この時間。目を合わさずに呟くと、「こっち見ましょうよー」と声が帰ってくる。察しろバカ。全部夕陽のせいさ。





オフ会ありがとう、兄ちゃんへ!虎丸さん中三とか年齢操作ごめんなさい。感謝を込めて、捧げます。受け取ってくれると嬉しいです。


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