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「ねぇグリーン。疲れてる?」
「別に疲れてねぇけど……何だよ」
「疲れてるって言ってよ。わたし美味しいモノつくってあげるから!」
「えぇーいいよ」

げんなりとした顔が返ってきた。失礼な奴だ。わたしが作ったモノは食べられないのか!と言ってやるとあっさりと答えられてしまう。「そうだけど」と。……少しだけ傷ついたけどきっとそれをグリーンに言ったって笑われるだけだから笑顔を作った。「まぁそんなこと言わずに。今度こそ大丈夫だから」
確かに少し前にグリーンに料理を作ってわたしにとって消してしまいたい記憶を残したこともある。だけど今回は、そんなことないと言いきれる、胸を張れる。だからもう一度だけわたしを信じてほしいんだけど……グリーンはもうソファにごろんと寝転がってしまっていた。何て奴だ、やっぱり失礼な人。

「ねぇグリーンお願いよ。今度こそ大丈夫なんだって!」
「……分かった分かった。で、何作るの」
「カフェオレよ。ほら、何も怖いことなんてないでしょう?」
「……あっそ」

じゃあ5分以内な!すげぇ熱いのがいい。……結局何だかんだ言って飲んでくれるんだ。耳元で小さくありがとう、と呟くと「早く行けよ!」と部屋を追い出されてしまった。ああそういえば、昔グリーンの耳に息を吹きかけて遊んでいたとき、すごく怒られたっけなぁ。わたしももうちょっとは学習しなければ。いつかグリーンに嫌われちゃう。

台所に向かうとそこにはナナミさんがいて、グリーンにカフェオレを作ってあげることを伝えると一瞬だけ表情が止まり、少しだけ笑ってくれた。まさかナナミさんまでわたしが失敗するとでも思っているのだろうか?でもよく考えてみればカフェオレなんて簡単な飲み物。それさえ作れなかったら、ちょっとわたしだって情けないと思えるわ。だからその意味も含めて、絶対成功させてやる。


……………
………



「グリーン、できたよー……あれ?」

5分で作れという無茶な条件も余裕でクリアして部屋に行ってみると、ソファの上では気持ちよさそうに寝ているグリーンがいた。とりあえず持ってきたカフェオレを机の上に置き、その身体の横に座ってみる。何だよ、早く作れっていうから、言われたとおりにしたというのに。すやすやと安らかに眠っているグリーンのきれいな顔に、ビンタを食らわせた。ベチン、自分で聞いても酷く痛そうな音だと思う。

「いってぇ!てめ名前、何すんだよ!」
「だってグリーンが寝ているんだもの。カフェオレ作ってきたよ、飲んで」
「何か強制的になってねぇ?」
「いいから飲んでよ!」

料理が上手いとは言えないわたしでも、自信作だ。だって作り方なんてミルクを温め、インスタントコーヒーの粉末を適度に入れ、砂糖を入れる。火だって使ってないし、オーブンだって使ってない。だけど、心はこもっているつもりだ。一口含んだグリーンの顔は、きっと「うめぇ!」と言って輝いてくれるに違いない。――、と思っていた。

「甘っ、どんだけ甘いんだよこれ!」
「え、普通に砂糖入れただけだよ」
「お前俺があんま甘いモノ好きじゃないって知ってたよな?」
「……そうだったけ?」
「わすれんなよ!」

これはまさか、また失敗してしまったということなんだろうか。……情けない、今度こそグリーンを喜ばせたいなんて思ったけど、まだ未熟だったのか、それともそれ自体が無駄なことだったのか。「ごめんね」小さく呟いた言葉に返答はなく、もしかして無視されるぐらい腹を立たせてしまったのかと思ったけど目の前に入ってきたのはカフェオレが入っていたマグカップで、中身は空っぽだった。

「あ、あれ。グリーン飲んだの?」
「うん。だって不味くはなかったし。今度はもうちょっと甘さ控えめの作れよな」
「……うん、頑張る」

何だかんだ言って飲んでくれるんだ、グリーンという人は。受け取ったマグカップは、既に冷たくなっていた。少しだけ、それを愛しいと感じることができた。よかった。



/あさの
グリーンさん


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