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見かけたとしても、多分二度と会話という会話をしないと思っていたのに、あの人は意外と校内で鉢合わせ、何かと声をかけてきた。周りのやつが毎回要らないリアクションを取ってくれるのは正直迷惑だった。「何だよ倉間、お前早速彼女でもできたのか?!」ほんと意味わかんねぇ。周りに女子がいたらすぐに彼女彼女って、うるさすぎるだろ。腹立つ。

「あんなの、彼女なわけねぇだろ」
「だよなぁ。倉間のタイプじゃなさそうだし」
「お前俺の何を知ってんだよ」

まだ高校も始まって1カ月。それなりに行動を一緒にはするが、すべてを全て、明かしたわけじゃないんだから。知ってるように話すそいつがうざかった。最近何に対しても腹立つとか苛つくとか。そんなケンカ腰の態度は中学からだからあんまり変わらない。だけどどうだろう、初対面の人から見たら、生意気だとかチビのくせにとか思うだろうか。自分で言って悲しい。早く背、伸びてぇなぁ。







「あ、そうだ倉間くん、わたしは君に言いたいことがあるんだわ」

離れて行ったと思ったのに、突然また近づいてきたあの人は俺に話しかける。言いたい、こと、だと?身構えなんて柄じゃないのにしてしまう。「そんな変なことじゃないよ」苦笑いしてるって、説得力あるのか。

「ここでは恥ずかしくてあんまり言えないから、初めて会った場所覚えてる?あそこに来てよ」
「……はぁ、」
「いい?お願いね!」

そう言って笑顔でまた走り去って行った。何だこれ、何だこの展開。横ではうるさいやつが「ついに来たか!告白!マジお前倉間すげぇーな!」なんて騒いでいたから蹴りを一発入れてやった。何が、こ、告白、だよ馬鹿野郎。だけど恥ずかしいこと、とは一体何なんだろうか。
気になって、午後の授業に集中できなくて教師に注意された。単純すぎて笑えない。


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