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「初めまして、君はトレーナー?」
「うん、まぁ」
「そう。何かカッコイイね!わたしはただ歌って回ってるだけだから」
「そうなんだ」
「ねぇ、ひとつだけ聞いていい?」

少しだけ恥ずかしそうに、その人は俯いた。もしかしてこの人、人見知りだったりする野だろうか。だから、恥ずかしくなって……いやいや、だったら始めから俺に話しかけたりなんかしない。一人で問いかけ、一人で解決するとはなんて寂しい動作だろうか。「それで、何を聞きたいの?」初対面故に丁寧な口調になる。消え入りそうな小さな声が、返ってきた。

「あそこから聞いてて、わたしの歌ってどうだった?」
「はぁ?」

随分と呆けた声だ。申し訳ないとは思ったけど、でもあまりに唐突過ぎた。歌、確かに聞こえた声は……よく聞こえたけれど、上手いと言えば……上手い、のだろうか。歌はあまり聞く方じゃない。強いて言えばキンセツシティにいたおじさんから歌を披露された。だけどあのときは深いところまで考えてなかったから、改めたこの質問には答えがたい。さて、何て言えばいいのだろうか。

「あ、正直に答えてね」
「……よく分かんない」
「……そう、ならいいけど。ごめんね、ありがとう」

少しだけ、悲しそうな寂しそうな顔をしてその人は立ち上がった。「じゃあもう行くね」と一言残し、今俺が来た道を進んでいった。答え方が適当すぎたのか。でも、じゃあ何て答えればよかったのか分からない。まぁでも、この広い土地での出会い。もう一度、には期待しないことにしよう。



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