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最近なんか変わったね、なんて友だちはよく言うんだ。何も変わってない。いつも通りのわたしなのに、何処か違うと言い張るんだ。じゃあ何処が違うのかと聞けば、「最近明るくなったね」なんて。まるでそれ以前のわたしは暗い人間だと言わんばかりで少し腹が立ったけど、にこりと笑って済ませておいた。きっと明るくなった、っていうのはいい意味なんだと思う。わたしがそう思いたいだけなのかな。確かによく笑うようになったかもしれないけど、人から見てもそうなのかと思うと、友だちの意外なる観察力に驚かされた。「最近、何かあった?」そうか、わたしはこの子にまだ話してなかったのか。っていうかまだ誰にも言ってないことだ。消え入りそうな声もはっきりと立たせ、それを口にする。「わたし、風丸くんと付き合うことになったよ」瞬時に友だちの大きな声が教室内に響くのだった。

「え、え、待って。え、……本当?」
「うん、本当」
「何か最近やたら風丸と仲良いなぁとは思ってたけど……そういうことだったのね」

ああ、この甘くくすぐったいような気持ちをどう言葉に表そう。わたしはきっと、誇らしいようで自慢げで、とても今幸福に満ちているに違いない。人生初の恋は実り、今やっと風丸さんと付き合ってる、と自分から言えるようになった。何だか少しだけ自分が恥ずかしく思えることもあるけれど、気にならなくなってしまったのはやっぱりわたしが変わったからかな。そうだと少しだけ、嬉しい。
このことを言えば、きっと友だちは喜んでくれると思っていた。または羨ましがるか。どちらにせよ、わたしは誇らしいことに変わりない。だけど何処か様子が変だ。何か悩んだように友だちは腕を組み、この知らせを受け止めている。何か、気に留めるようなことを言っただろうか?

「どうしたの、そんな難しい顔して」
「いや、名字ちゃん大丈夫かなって思って」
「え?」
「だってさ、……こんなこと言うのも悪いけど、何か二人って合わない気がするんだよね」

頭を何かで殴られた気分だ。多分友だちはわたしのことを思って言ってくれているんだろう。言葉の残酷さも、友だちのことを思えば少しだけ和らげることができた。ただ気がかりなのは、わたしと風丸さんが合わないということだ。やっぱり、そうなのかな。そのことを悩んでいなかったと言えば嘘になるのだから、今更突きつけられたそれに悲しみを覚えた。

「まぁ別にいいんだけどね。ごめん、気にしないでー」
「うん、大丈夫だよ」

本当は嘘だった。気にせずにはいられない。そのときまで満たされていたわたしの心も、何処かぽっかり穴が空いたような気がする。彼女の言葉が原因とは言わない。だけど、やっぱり、不安なのには変わりなかった。


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