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「もう夕暮れかぁ……早いなぁ」

最近朝起きても、直ぐに日が暮れてしまう気がする。ほら、今日もあと少ししたら終わってしまうなんて正直、信じたくない。……なんてことを大自然の太陽さまに言えるはずがない。いちいちため息を吐くことでもない。なのに、どうして、こんなにも一日の終わりを名残惜しく感じているんだろうか。ミシロタウンの近くにあるこの公園から家まで歩いて15分。やっぱり、ため息が溢れた。
キコキコ、と風で小さくブランコが揺れ出した。かさかさ、と葉を踏み近づいてくる足音が聞こえる。振り返るとそこには久しぶり、と言葉を交わすユウキくんがいた。本当に、久しぶりだ。

「ユウキくん!どうしたの?」
「別に。普通に帰ってきただけだよ」
「ふぅん、そっか」

そっか、そうだよね。何ヵ月も家を空けていたんだから、久しぶりに帰ってきたって別におかしなことなんてないんだから。お母さんが心配してたよ、なんて冗談でもない嘘を言ってみると、ユウキくんは苦笑いをする。あ、今の笑い方好きだなぁ。

「そういう名前は、ブランコに乗って何してたの?」
「少したそがれてました」
「はは、マジかよ!名前が?」
「何それどういう意味……って、うわっ?!」

ガタン、今度は大きくブランコが揺れた。何が起きたのか一瞬分からなかったけど、すぐに状況を頭が理解する。後ろからユウキくんがブランコに飛び乗ったんだ。いきなりのことでびっくりしたけど、危ないことするなぁ……体勢は辛いけど、首だけ後ろを向いてみる。危ないよ、と呟いてみたけど、多分それは届かないだろう。ユウキくんは、笑顔だった。
ブランコの二人乗りなんて、何年ぶりだろう。まだお互いに幼いときなら体格も同じくらいで難なく乗れたのに、いつの間にか追い越されてしまっていた背丈はもうこの状況に従うしかない。久しぶりだというのに、ユウキくんはブランコを漕ぐのが相変わらず上手だ。昔はわたしの方が上手かったのに……流れ次第に変わっていくわたしたち。でも、こんな風にいつでもブランコの二人乗りができるような関係でいたいんだ。

「ねぇ、帰らない?」
「あーうん、そうだね。じゃあ止めるよ」
「うん」

本当はこのままでいたかったけど、傾きだした夕陽がそれを止める。さっきまで、まだ高かったのに……もし、時間を止めることができるなら、今がいいな。小さな呟きにユウキくんがくすりと笑った。そして同じように呟くんだ。
「分かるよ」って。



/兄ちゃん
ユウキくんとほのぼの


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