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つい、声をかけそびれた。
大体何で話しかけてる途中で勝手に行くんだよ。前の列が進んだからって、ちゃんと最後まで聞けよな。溜まっていくのはイライラとしたあいつへの感情だった。随分と前に行ってしまった。今更声をかけるのは気が引ける。


「何、今の彼女かよ」

「後輩」

「それ、渡さないの?」

「後でする」


連れは察しがいいようで、今まさに悶々と考えていたことを指摘する。そんなこと、お前に言われなくなって分かってるよ!目で姿を追っていくと、どうやら注文はすでに済ませたようで、席へ着いている。何でそう行動早いんだよ。


「悪い、俺の分買っといて」

「は?ちょ、待てって倉間!」

「いつものな!」


財布を投げ出し駆け出す。あいつが見つかりやすい場所に席撮って置いてくれて助かった。近づくと見上げるように俺に気付いた名字は、驚きを隠せずにいた。驚く必要性が見つからない。だけど今はそこに突っ込むときではない。


「これ」


ぶっきらぼうに差し出したものを、名字は受け取ろうとしなかった。



追いかける


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