txt | ナノ

誰もが皆、一度は訪れるというモテ期に今更わたしは憧れを抱いている。どうして人は人を好きになるのかとか、どうして男の人は女の人を、女の人は男の人を好きになるのかとか、意味の分からないことばかり考えてしまうの。きっとそれは、最近わたしが恋愛に対して何の情も燃やしてこなかったからだ。

いいなぁ、恋愛。

だが今は恋愛より食事だと、握りしめた財布に決意する。食堂がお昼時に混むことは知っていたけど、まさかここまでとは……友人に席を取ってもらわなければよかった。その役をわたしがやればよかった。楽そう。


「おい、名字、」

「はい何ですか」

「そこ邪魔だ退け」

「……く、倉間さん!うわ、すみません」


声をかけられてやっと分かった。通路のど真ん中にため息を吐きながら突っ立っていたわたしは、何処からどう見ても邪魔な存在だった。声をかけてくれたのが倉間さんでよかった、なんて安心している自分がいる。


「倉間さんも学食ですか?」

「うん、まぁ。お前も?」

「はい」

「……あ、だったらさ」

「お、列進んだ。じゃあお先に行きますね」


そう言ってわたしは倉間さんから離れていった。さっき何か言われかけたけど、きっと大した内容じゃない。……って決めつけても大丈夫かな。
だって倉間さんがわたしに何か話しかけたこと自体が珍しい。もうそれだけで十分。



焦がれる


- ナノ -