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最近、考えることを冷静に行うようになった。果たしてそれが自分にとっていい方向へと導くものなのか、とか。利益とか自分が得するとか、そういった汚いことばかり考えるようになったんだ。昔はもっと素直で純粋でさ、受け容れるままの状態だったのになぁ。何が、わたしを変えたんだろう。多分答えは簡単だ。

「あの、水鳥さん。一言だけいいですか」
「何だよ」
「倉間くんと勉強しろって言うけど、倉間くんと勉強したって何にもなりませんよ」

きっと倉間くんと勉強したって何にもならない。だって彼はそこまで成績がいいと言うわけではないんだから。……わたしが言えるようなことじゃないけど!だけど、倉間くんには悪いけど言えることがある。彼の成績ははっきり言って、微妙だ。わたしの苦手とする科目の点数がとれるわけでなく、わたしが得意とする科目の点数がとれるわけでもなく。ただいつも、わたしより成績がいいだけ。何処から聞いても、負け惜しみにしか聞こえないのは何でだろう。

「わたし、今回はいい成績とらなきゃ行けないんですよ」
「あ、さては親に叱られたか」
「……まぁそんなところです。だから倉間くんと勉強するのはなしですよ!っていうかそもそも、無理だし」
「ふぅん、そっかそっか」

あ、絶対分かってない。面白がるように口角を上げ、含みのある笑みを浮かべている。これ以上ここにいると、また変なこと言われるのかも知れない。「トイレ行ってきます」なんて我ながら色気のない言い訳だけど、これが一番手っ取り早かった。
廊下を小走りで進み、目的の場所へと向かう。……やっぱり、来ない方が良かったかも知れない。女子トイレの横にある男子トイレから、会いたくない人が出てきた。どうしてよりによって、目が合ったんだろう。何か思い出したかのようにわたしに近づいてくる。いやだなぁ。

「おい、名字」
「何ですか、倉間くん」
「お前俺の理科の教科書借りっぱなしだろ」
「……あっ!ご、ごめん。家に置いて来ちゃった」
「バッカじゃねぇの。ったく、今日ないからいいけどさ」
「ごめんね」

あぁ、何話しかけられるのかちょっとだけ怖かったけど、意外と普通なことで良かった。理科の教科書ってことは、もしかして倉間くんももうテスト勉強し始めてる……?そりゃそうか。1週間前で部活も一旦停止されてしまうんだから。

「倉間くん、もう勉強始めてるの?」
「今日から」
「ふーん、そうなんだ」
「どうせお前も今日からだろ」
「えーわたし2週間前からやってますけど」
「うぇ、マジかよ。どうした、大丈夫か?」

水鳥さんの言ったとおりだった。確かに倉間くんは驚いている。「大丈夫か?」なんて水鳥さんと同じこと言って……わたしって、そんな勉強嫌いに見えるかなぁ。勉強好きに見えても困るんだけど。
あ、でも理科の教科書って何処置いたっけ。


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