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何も信じられなくなって、失って、嗚呼希望が生み出される場所も何処かさえ忘れてしまったよ。涙も出ない、浮かばない、ねぇ今見ている夕陽さえも黒ずんで見えるのはどうしてなんだろう。穏やかだねと零す温かな毎日さえ、どうしてわたしは楽しめなくなったんだろう。意味のない言葉を並べ、自分にとって都合のいいようなものだけ選び取り、それだけでは満足できないなんて言うんだから人は嫌いだよ。でもごめん、わたしもそれに当たる人だから。だからかな、こんなにも痛い痛い頭が痛い。何が正しいの、何が間違ってるの。分からないの。涙も乾くくらい泣いたから、もう何も出ない。嗚呼、なくなって終わるのか。


〜〜〜


「名前は終わりかもな」
「何であんな塞ぎ込んじまったんだよ。最近ずっと暗くね?」
「さぁ、弱いからだろ」
「あーなるほど」

少し前までずっと気のいい仲間だったというのに、あれ違ったのかな。だから感嘆にもそう言えるの?わたしのことだけど、わたしのことだけど。悔しいわけでもなく、悲しいわけでもなく、じゃあこの感情は何だろうか。そう考えることも忘れてしまいたい。そうだ、わたしは忘れてしまいたいんだ。生まれる前の状態に戻りたい。そうしたら、ここにいたことも何もかも記憶は消えて、また新しく生まれてこれるんだから。
新しく生まれるなら、普通の中学生として生きたいな。勉強して友だちと遊んで。想像しただけで、何て楽しそうな人生だろうか!まだ10年と少ししか生きたことないから、人生ってどんなものか分からないけど、きっとここにいるより数倍辛くないはずだ。

「名前はさ、それでいいの?」

そう、心に問いかけるような声が不意に聞こえた。知ってる、声だ。だって仲間だったんだから。……ううん、わたしはきっと、できることならまだ彼らのことを仲間と呼んでいたい。もし、許されるならもう一度立ち上がって、間違ったことでも汚いことでも、彼らと一緒に歩んでいきたいと思うんだ。誰、と問いかける必要はなかった。知ってる、いつでもこの声に安心できた。自分を知って、元気をもらった。カイ?呼びかけには風が答えた。足音と人影がそれを示す。嗚呼、やっぱりそうだ。

「名前はさ、それでいいの?」
「……うん、きっとよくないって思ってるよ」
「でも、逃げたいんだ?」
「……うん」

すごいねカイは。分かってるんだ、わたしのこと。本当にすごいね。多分わたしはカイのそういうところに安心できて嬉しくて、好きなんだ。いつもそうだったかな。わたしは馬鹿だから、悩むことなんてしょっちゅうで、その度にカイが来てくれて、話を聞いてくれた。でも、カイはいつも手を貸さないんだ。わたしが自分で立てるのを、待ってくれているんだ。
心は決まっていた。ここにカイが来てくれてよかった。立とう、そして進もう。だけど、不意に差し出されていた掌を見て、少しだけ驚いた。初めてだったから。優しく手をさしのべ、わたしが手を差し出すのを、ずっと前から待っていたかのように――。握り、その力に合わせて立ち上がったとき、目の前に広がるオレンジ色の光はやっぱり黒ずんで見えた。まだわたしは未熟だから、そう見えてしまうんだ。
もう一度一緒に走れば、あれは綺麗に美しく目に映ってくれるかな。その問いかけも、頷きと共に悩んでいたことさえも消えてなくなるだろう。

「ありがとう、カイ」

そう言った言葉も、消えてなくなるんだろう。やっぱり生まれる前に戻りたい。


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