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昔から、押しつけられるようなことが多々あった。たとえば小学4年生のころ、わたしは花壇への水やりを主な仕事とする園芸委員で、それなりに仕事はちゃんとこなしていた。ただ、一緒にやっていた友だちは、用事の多い子だった。ごめん名前ちゃん。わたし今日用事で水やりの当番できないから、代わりにやっておいてくれる?むかしむかし、それに対してわたしは何て答えたのだろうか。笑顔で、うんいいよ、とでも言った?きっと、そうに違いない。果たしてその子が本当に用事だったのか違ったのか、そんなことは今になってはどうでもいいことだけど、要するに小さい頃から人に頼まれたりすると断れなかった。断ることを知らない、幼いときだとしても、それは今になっても同じなのだから、性格故だろう。
なんて、なんて面倒な性格に生まれてきてしまったのだろうか。悔やむこともないけど、わたしは一人図書室である人を待っている自分が不思議に思えてくる。帰ろうって、何で言ったのかとか、何で今日の朝、おはようと言ってくれたのかとか、それに、どうして最近しゃべりかけてくれるの、とか。考え出したら止まらない疑問を思いつく限り浮かべ、回転の悪い脳を奮い立たせる。やっぱり、今日は疲れる。人との関係でこんなにも考えたのは初めてだった。わたしには、わたしが嫌われたくないと思う子と友だちならそれで十分だと思っていたのだから。

ガラッ
図書室のドアが開かれた。振り返ると、夕陽に顔を照らされた制服姿の風丸さんがいた。制服ということは、もう部活も着替えも済ましてしまったのか。「あ、あの……」上手く言葉が続かない。まず最初に、何て言えばいいんだろう。帰りましょうか、それとも、いきなり疑問を口にする?嗚呼いけない、それだけは避けろと本能が告げる。思ったことが、すらりと口から出た。

「あの、ぶ、部活、お疲れさまです」
「うん、ありがとう。……それじゃ、帰るか」
「あ、はいっ」

自然な流れへと変わっていく。どうやらわたしは、失敗していなかったようだ。よかった。だけど、バッグを肩にかけ、風丸さんの横に並んだとき、気付いてしまった。これは二人きりという状況か。妙な緊張感を覚え、身体が少し縮こまる。そんなわたしを気遣うように、風丸さんが口を開く。

「あ、そうだ。名字、」
「はい、何ですか?」
「……その敬語、いつになったら抜けるんだよ」
「え、ええっ、ごめんなさい!」
「いや、もういいけどさ」
「ご、ごめんなさい……」
「あのさ、」
「はい」
「俺たち、付き合わない?」

それが何を意味するか、わたしはよく分かっていた。だってそこまでバカじゃない。だけど、受け容れられるかはまた別に話になる。
だって、そんな、だって。取り柄も何もないわたしに、どうして?


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