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心の中を埋め尽くすのはもやもやとした感情で、その正体は不明だった。本当は何に対してこんな気持ちを抱いているかなんて分かっていたけど、本人に直接言えるわけでもなく、道を歩く足がただ動くばかり。浜野は、多分気にしてないんだろうな。横で今日のサッカー部での出来事を面白おかしく話しているそれも、最初は笑えていたけど、今は段々頭に入ってこない。……余りにも、冷たいんじゃない?友だち友だちって、傷つきはしない。だけど、やっぱり傷ついた。
あのさ、ねぇ。呼びかけたけど、遮られてしまった。「そういえばさー」と話題を振ってくる。まぁわたしの話なんて、最悪後回しでもいいんだから、気にしないでおこう。何、と聞き返す。「倉間がさ、」……やっぱり、倉間くんの話題なんだ。

「倉間くんが、どうしたの」
「何か心配してた」
「何を」
「んーあんまり詳しく言いたくないんだけど、倉間勘違いしてたよ」
「…え、意味分かんない」

詳しく言わないで、それをどう理解しろっていうのだろうか。全く理解できないバカな頭を抱え、もう一度浜野に奇異診ているけれど、何度聞いても、あーだのうーだの歯切れが悪くて、そんなにも答えたくないようなことなのか。わたしだって、そんなしつこい人間じゃないから、深くは追求しなかったけど。

「まぁ何だ、俺さ、名字は倉間と付き合えばいいと思ってるから」
「はぁ?!い、いきなり何」
「前にも言ったっしょ。お前らはお似合うだと思う」
「……別に、いいからそういうの」
「でも倉間はちょっといかんなー」

今日も名字との約束?かは分からないけど、破ったんしょ。……浜野はすごい。どうしてそういうことばかり分かってしまうんだろう。わたしはまだ、何も詳しく話していないと言うのに。こくりと頷き、やっぱりなーと笑うのは仕方ないことだと思う。うぅ、思ったら何かやっぱり悲しくなってきた。

「あのさ浜野、わたし聞きたいことあるんだけど」
「うん?」
「帰りにさ、女の子に大事な話があるから、って誘われたとして、それって普通は何だと思う?」
「………」
「……浜野?」
「へーん、倉間に告白するつもりだったん?」

……平静を装えばいい話だ。わたしは浜野に対し、いつも通りの声と調子と笑顔で答えた。「何言ってるんの浜野。。今はそんなことどうでもいいでしょ」――「はいはい、そうですねー」……この態度、きっとばれてしまった。でも、どうせ浜野にはばれることだろうと思ってたし、気にしない。そう、気にしないの。

「倉間くんってさ、ど、鈍感なの?」
「え、今頃気付くのそれ。遅いっしょ」
「うるさい!」

思わせぶりな態度を取っても、きっと伝わらないのはわたしが倉間くんの中で恋愛対象に入ってない友だちだということと、倉間くん自信が鈍感なんだということだからだ。多分本当に、直接伝えるしか方法はないんだろう。
帰りに寄って、言ったらいいじゃん。浜野はそう明るく言ってくれた。人の気も知れないで。こっちはとうの昔に、そんな勇気消えてしまったというのに。ほんと、何か難しい。


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