txt | ナノ

日直日誌を朝の職員集会までに取りに行かないと日直をもう一度やらされる制度に今日こそは勝ってやろうと早く来たのは良いのだが、まだ運動部でさえ登校していない時間。さてどう時間を潰そうか。とりあえず温かいもの求めて自販機まで来てみるとよく知った人物がトラックをくるくる走っていた。こんな寒いのに元気なものだなぁ、と適当に温かいものを買って眺めていると丁度財布には120円。迷った挙句わたしはもう一度自販機のボタンを押した。

「へい君、暇ぁ?暇ならお茶しない?」

どう切り出していいか分からず、とりあえずナンパの決まり文句を言ってみれば明らかに「こいつアホだろ」と言いたげに倉間はわたしを見た。

「、なにやってんだよ」
「今日は日直でして」
「あー、そういや名字、最近ずっとやってたな」
「いやぁ、それほどでも」
「褒めてない。」

わたしにツッコミを入れると倉間はタオルを首にかけベンチに座る。休憩ならば丁度いいとさっき買ったポカリを倉間に投げた。

「、ん?」
「あげる」
「俺ポカリよりアクエリ派なんだけどな」
「それは残念だ」
「まぁサンキューな」

くぴくぴと喉を鳴らしながら飲んでくれるので差し入れした甲斐があったものだ。もうちっとで普段は隠された左目が見えるという所で、倉間はそれを飲み干したようで顔を元の位置に戻した。

「……なんだよ」
「いやぁ。アクエリ派とか言っておきながらもう飲み干したのね」
「わ、悪いか!」
「悪くない!なんせわたしはポカリ派だからな!」
「そんなことでドヤるなアホ」

今度は言葉でアホだと言われ流石のわたしでも黙ってしまう。下を向いて言葉を探していると小さな湯気を出した缶の存在を思い出す。

「、そういえば倉間はなんでこんなに早くから走り込みなんかしてるの?」

サッカー部の人は?そう訊ねると倉間はわたしから目線を反らした。訊いてはいけない事を訊いてしまったらしい。でも気になるものは気になるので敢えてそれを取り消すことはしなかった。少し冷めてしまった缶に口を付けズズズと飲んでいれば「うっさいわアホ!!」と関西人顔負けのツッコミを入れる倉間。

「ってか何飲んでんだよ」
「焼き芋ジュース。しかもホット!」
「ドヤるな」

倉間はベンチから立ちあがりわたしの横に並ぶと缶のパッケージを食い入る様に見つめ、「美味しいのか、それ」と問う。どう表現していいか分からない味なのでとりあえず缶を差し出した。

「、飲んでみる?」
「ん。」

よほど興味があったのか、小学生の様な瞳をしてわたしから缶を受け取り、間接キスとか気にもせずそれを口にする。が、倉間はすぐにそれから口を離した。

「ってめッ、名字!何飲ますんだよ!!」
「人聞きの悪いな。強要はしていない」
「こんな不味いもン普通飲ませるかよ……って、そうだ、名字はそういう人間だったな」
「そういう事ですよ。まぁそれ飲んで頑張れよ、カマセくん」

倉間がこんな朝早くから走り込みをする羽目になった原因とも言える彼らが来たのでわたしは退散することに決めた。

「おい、こら!誰がカマセだ!!」

後ろでキャンキャン騒ぐ倉間を無視し欠伸を一つ。うん、早起きは三文の得と言うけど確かに三文程度は得をしたようだ。



ーーーーー
繭良さんの1万打フリリクからいただきました!倉間くんに軽い口調で話すところ、いいですね!ありがとうございました!


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -