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レッドの細くて長い指が好きだ。多分、一番好き。その指で髪を撫でられたとき、その指で手を繋ぐとき握られるとき、動機はうるさいくらいに激しかった。きっとこんな小さな行動でいちいちドキドキしているわたしをレッドが知ったら笑うんだろう。でもそれはバカにしたような嘲笑いじゃなくて、穏やかで温かな日々を感じるような優しい笑い方だ。
レッドはきっと、わたしがどんなことをしても、優しく笑うんだろう。ときにそれが悪戯な意味を含んでいても、何の変わりもない。そういえばレッドはよく女の子にもてたなぁ。見た目がいいからだろうか。冠でもつけたら、何処かの王子様にでも勘違いできるからすごい。
でも昔、「レッドはかっこいいよね。サヨちゃんと並んだらお似合いだよ!」なんて思ったことを言ったら怒られた。(サヨちゃんっていうのはわたしの友だちですごくかわいい子。多分わたしの友だちの中で一番女の子らしくてかわいい。)怒られたと言っても、レッドが一方的にキレというのだろうか。ぷぅと頬を膨らませ、「あっそ」と無愛想な返事をし、その後3日間何故か口を訊いてもらえなかった。

こうして昔のことを思い起こすと懐かしくてたまらない。それなりに仲良かったし、それなりにケンカもした。そして今現在に至るまでつるんできたレッドは、一体今何を考えているの?さっきまでピカチュウの毛並みを弄っていたレッドは、隣で静かに寝息を立てている。昔だったらその顔にマジックで落書きをしただろう。だけどわたしだってもう流石にそこまで子供じゃない。レッドにだって、分かるでしょう?

そっと触れた頬は柔らかかった。「好きだよ」小さく呟いたその一言には、どんな意味が込められているかなんて、きみは考えたことないでしょう?いいの、知らなくて。知ろうとしなくて。一生、きみがこうして隣にいてくれるなら、想いが届かなくていい。っていうか、届くはずなんてないんだ。きみにはもう心に決めた相手がいて、わたしが望んでいる人はきみなんだから。
でもそんなこと、今更だからいいの。こぼれそうな涙を拭い、部屋を出た。顔を洗って、もしレッドが起きても、毅然と笑っていよう。絶対、気付かせないんだから。





ぱたんとドアが閉まる音がした。膝の上で眠っているピカチュウの背をひとつ撫でると気持ちよさそうな鳴き声がする。シンと静かな部屋に、何も感じることができない。

「知ってるよ、そんなこと」

気付かせないなんて、悲しいことを言わないで。もうとっくに気付いているというのに。小さな独り言も、静かな部屋に溶けていくだけだった。



title by ashelly


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