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お腹が減った。何か、食べに行こう。
そう思って私は、今いる洞窟を出る。外は雪と風が混じり合い、吹雪となっていた。
だけど、そんなこと私には関係ない。何故なら、私が元々住み着く世界は雪で埋め尽くされる白銀の大地だから。この場所が、私にとって一番居心地がいい。
この寒さ、野で生き物が凍死、あるいは瀕死になることなんて、よくあることだ。弱りかけた生き物を捕らえて、私は空腹を満たす。そうして、今まで生きてきた。
洞窟から少し離れた場所で、何かが倒れているのを見つけた。よし、今日は食することの問題はなさそうだ、と安心したとき――そこに倒れていたのは人間の女だった。
どうして人間がこんな雪の降りしきる山奥に…幾つもの疑問が浮かび上がる途中、その人の口から、小さな言葉がこぼれた。


「だれ、か…、たすけて」


助けて、とそう言った。
確かに聞こえたそのか細く、でも誰かを求めようとしている声に、私はどう思ったんだろう。
哀れに思ったのか。それとも、情が湧いたのか。自分の意志とは反して、動く手をそのままにして、私はその人を洞窟へ運んだ。どうして、私が人間なんかを助けてしまったんだろう。だけどきっと、彼女が目覚めたとき、その答えは出てくると思うんだ。


解けだしたのは雪ですか?
(いいえ、きっとそれは――私の心)


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