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例えばそれを恋と知ったとき、自分は一体どんな行動をするのだろうか。素直に告白する?それとも、黙って想いが消えるのを待つ?きっとわたしは、後者だ。伝えて、伝わるとは思っていない。伝えて叶うとも思っていない。きっと、今まで築いてきた穏やかな関係を自分で壊すだけ。それだけは避けたくて、だからわたしは何もできない弱虫なんだと知った。言っちゃえばいいじゃん、なんて友だちは言う。そりゃ、簡単なことだろうに。腹をくくり、覚悟を決め、「好き」の二文字を口からはき出せばいいのだから。でもやっぱり、簡単じゃないのが痛いほど分かるんだ。だってそんな、無理なんだから。

一握りの勇気さえなくなって意味もなさないのはやっぱり、わたしが弱虫だからだと思う。ねぇグリーン、わたし、辛くはないけど苦しくはないけど、分からないよ。わたしはきみが好き。でも、きみは違うでしょう。もしかして、のその先を想像したことがないと言えば嘘になるのだけど、でもあまりにもおこがましくて仕方ない。わたしはきっとそれになりたくて仕方ないんだろうけど、なれないと分かっているから、また何もしないで終わる毎日を積み重ねてしまうんだ。

一通りの言い訳を終わり、わたしは頭上を優雅に広がる青い空を見上げた。こんな悩みなんて、この大空に比べたら、この世界に比べたら、アリのような存在。ううん、もっと小さくて無力で、本当に意味がない。こんなことで悩まなくていい、と風が笑うように吹き通っていく。

「おい名前、聞いてるのか?」
「え、何?」
「だからさ…――」
「うん、うん」

悪いと思っていても、やっぱり変じに気持ちを込められていなかった。内容を聞いていないから理解できないけど、笑顔で何か語っているグリーンは楽しそうだった。何がそんなに楽しいのか分からない。グリーン、不意に呼んでしまった名前に、彼が振り返る。少し驚いたような顔をしていた。きっとわたしが、真面目な顔をしていたからだろう。

「何?」
「あのね、……」
「うん」
「……」
「何だよ、言えって」
「……やっぱり、何でもない」

笑顔でそれを返せば、きみのことを誤魔化せただろうか。何だよ、と小さく呟き、そっぽを向いてしまう。日の照るその日、外へ出かけたのは何時間も前のことだった。混み合った道を行くのなら、はぐれないようにと差し出された手を、またわたしは意図的に無視してしまった。「ほら、行こうよ」……無理矢理、笑って見せた。それにつられてきみも笑う。

引っ込めたその手を見るのが少しだけ辛かった。その手を握っていたら、何か変わっていたのだろうか。変わっていたのかもしれない、小さなこの関係に、ひとつの変化を生むことが出来たのかもしれない。だけど、変わることも何もかも怖い弱虫のわたしに、手を伸ばすなんてことは出来ないの。


特別になる勇気はない
だけど、それでも、変わらずにこのままで、



企画・思春期さま提出


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