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高校に入ったらさ、倉間は何かやりたいことある?高校受験が近づいてきたあのころは、そんな夢みたいな発言も何度かしたのも覚えている。別に大したことをやろうと思わないが、強いて言えば、もう一度大好きなサッカーをやりたい。俺が入った高校にも確かサッカー部はあったはず。特別強いとも言えず、弱いというわけでもない。勝ち負け関係なく、楽しくサッカーをしようなんて思うことは初めてだ。雷門にいたころは、やっぱり試合に出るのが楽しかった。試合に勝つのが楽しかった。高校でもう一度、それを味わうというのも悪くないだろう。

そろそろ桜も散りだした季節、部活登録のために俺は同じようにサッカー部入部希望の奴らと一緒に部室へと歩いていた。部室は確か、校庭の隅にあるそれなりの大きさを持つ建物だったっけ。中に入ると部長と思われる人がいて、俺たちより前に入部申請をしにきた奴らの対応をしている。部長の名前は藤原とかいった。







「つー訳で、サッカー部入ったから」
「そうか。まぁお前なら入ると思ったよ」
「どうせ神童も入ったんだろ?」
「まぁな」

家に帰り6時過ぎ、神童から携帯に電話がかかってきた。用なんて大したものではないが「調子はどうだ?」と久しぶりに聞いたかつてのクラスメイトの声は随分と懐かしいものに感じる。ついでにこの春休み、背が5センチも伸びたことを伝えてやると、笑われた。俺よりデカい奴は、こうやって笑うから腹が立つ。いつか追い抜かしてやる。

「じゃあ、お互い頑張ろうな」
「おう」

そう言って、短い会話を終えた。


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