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名前さんが失恋した。ずっと小さい頃から好きだったという人に。悲しくて、悲しくて、昨日からずっと泣いている。その悲しみが痛い程伝わってきて、私も悲しい。あんなにも悲しんでいる名前さんを見たくない。私が好きなのは、名前さんの笑顔なのに。あなたを悲しませて、好かれていたその人が、羨ましくて、嫌い。言葉を話せない。本当は、すぐに側にでも駆け寄って、その涙を拭って、「大丈夫ですよ。私がいますから」って言いたい。ずっとあなたの手持ちとして歩んできたのだから。あなたのポケモンとして、一緒に戦ってきて、ずっとあなたを求めていたのに。私には、何も出来ない。
だけどやっぱり、伝えたくて、側にいたくて、元気になってもらいたくて。近くに駆け寄り、そっと言ってみる。「大丈夫ですよ。私がずっと、名前の側にいます。ずっと大好きですから。だからそんなにも泣かないで」もちろん、その声は届くことがないってこと分かってる。


「ありがとう、キルリア」

「私を、慰めてくれるの?もう、大丈夫だから」

「さ、もう行こうか」


無理矢理涙を押し込め、拭って、名前さんは笑った。とても、にこやかに、笑った。それが無理をしているってことなんてすぐに分かる。私はキルリア。かんじょうポケモン。相手がポケモンであろうと、人であろうと、伝わってくるものがある。私はやっぱり、何も出来ないのでしょうか。こんなにもあなたのことを想って、好きなのに、それでも伝わらない。だけど、あなたの悲しい気持ちだけは伝わってくる。いつか、その悲しみが消えてくれる日が来るのなら、私はもう一度、伝えたい。どうしても、と言うことを聞かない、この気持ちを。


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