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教室に戻り確認してみると、確かにその日英語の補習が授業後にあるみたいだ。浜野の言ってることは本当だったのか。いや、疑っていた訳じゃない。ただ、それが嘘であればよかったと切実に願っていたものだ。昼放課、茜ちゃんと机を向かい合わせにして開いたお弁当も、何だか食べる気がしない。はぁ、と不意に出てしまったため息に反応してきたのは、何処からともなく現れた水鳥さんだった。

「どうした名前、朝からため息吐いて」
「もう朝じゃないです、お昼です」
「細かいこと気にしない。……そういえばお前、今日英語の補習だったよな?」
「言わないでよ、今忘れかけたのに!」

水鳥さんは一体何しに、昼放課わざわざ隣のクラスであるここに来たんだろう。嫌な予感しかしないのは気のせいか、否か。どちらにせよ、絶対いいことじゃないに決まってる。

「英語の補習っつたら、お前浜野と一緒だろ」
「っ、そ、それが何か」
「ちゃんと誘えよ、デートに」
「は、その話マジだったんですか?!嫌ですよ!」

身構えていたけど、やはり面と向かって言われると何だか恥ずかしい。わたしは別に浜野のことは好きじゃないただ、気の合う友だちとしか思ってない。デートに誘ったからといって、その気持ちが左右されることはまずないだろう。だけど、やっぱり、恥ずかしかった。デートなんてしたことないし、ましてや誘ったことなんて。それを強いられるなんて、わたしの人生いつからこんなにも恋にありふれたものになってしまったの?

「嫌ですよ、絶対」
「分からないかなー自分の好きじゃない奴とデートして、本当の気持ちに気付いてこい、って言ってんの」
「は、」

やっぱり水鳥さんの言ってることは何度聞いても理解できなかった。それじゃあまるで、わたしが自分の気持ちに気付くために浜野を利用してるみたい。気分悪いや。

「もっと無理です。それは何だか卑怯な気がします」
「大丈夫、状況はわたしが浜野に話しておくから」
「それじゃあ最初からデートする意味なくないですか?!」

ついに何も言えなくなってしまった。補習まで、あと約2時間だ。


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