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朝から頭の痛いことばかりだった。
ここ最近倉間くんに合わせて早起きをしていた、今日も、そのつもりだったのに。今日に限って目覚まし時計をセットし忘れて遅刻ぎりぎりの時間に学校の校門を潜った。それを見た倉間くんは鼻で笑ってくるし、正直今でも眠いし、何か知らないけど先生がやたらわたしにものを頼んでくるし。今日は運がないのかもしれない。……いや違う。わたしに元々運がないんだった。

「あーくそ、眠い上に重いよ」
「また先生に頼まれちゃったもんね、それ何処に運ぶんだっけ?」
「理科準備室。……茜ちゃん、手伝ってくれたりする?」
「しないよ」

さらりとそれを笑顔で言うんだから、我が友ながら残酷さを感じてしまうよ。ちょっとぐらい手伝ってくれたっていいじゃん、と呟いても無駄なのは分かってる。元々そういう風にわたしが苦労してる姿を横で楽しそうに見てるんだから。本当は中身、真っ黒なんでしょ。もう諦めてるからいいけど。はぁ、肩が痛い。

そういえば次移動教室だった。ものを運ぶのにもたもたしていたら、授業に遅れてまた何かとばっちりを食らうのかもしれない。それだけは勘弁して欲しかった。茜ちゃんにわたしの授業の持ち物持って先行っておいてくれるか、と尋ねてみると笑顔で頷いてくれた。「うん、いいよ。じゃあまた後でね」――何でこういうときだけ素直に頷いてくれるんだろう。ホント茜ちゃんって不思議な子。





理科準備室にものを運び終わると、それは授業開始2分前だった。今から急げば多分何も問題なく時間は進んでいく。廊下を走らないようないい子ではないけど、説教されない程度の小走りで教室まで急ぐ。確か次は音楽だったな。階段を駆け上がっていくと、曲がり角でいきなり現れた人影にぶつかりそうになる。だけど、身体が早く反応してくれたおかげで面倒臭い事態は避けられたみたいだ。
ただ目の前に現れたその人物に、少しだけ苛っとしただけ。

「何で浜野がいるの……」
「うわ、危ないなー名字。そんなに急いで何処行くの?」
「音楽室ですけど」
「ふーん。もう授業始まるに?」
「同じ言葉を君にも返してやろう。何してたの浜野は」

俺はトイレに行ってたー、と明るい声で言うんだから、脱力してしまう。あぁ違う、意識してるとかそういうんじゃない。昨日言った水鳥さんの言葉を思い出しているとかそういうんじゃない。ただ、なんて言うんだろう。浜野って相変わらずだなぁ。まぁここは多く語らず、今はお互いにある授業の為に急がなくては。

「じゃあね浜野」
「あ、そうだ名字。お前さ、今日英語の補習あるの知ってる?」
「…え?」
「どうせ知らんかったろ。授業後だって」

まぁ今回も仲良く補習でも受けましょうか、なんて笑顔で言い残していく浜野を見つめ、やっぱり脱力した。よりによって今日、大嫌いな英語の補習だと……?うれしくない偶然が、重なった。


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