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彼はどんな人だろう。考えただけで、それは何通りの答えを示し、わたしを惑わせる。いつもいつも、わたしはきみのことばかり考えていた。バカじゃないの、と友人に笑われ、何か気持ち悪い、と他人に嘲笑われても、決してその思考を止めることができない。いつからか、わたしの頭の中はきみでいっぱいになってしまったよ。きみさえいればいいとか、きみが名前を呼んで存在を求めてくれればいいなんて思っていた。

でもやっぱり、わたしは辛いよ。頭の中が一人の男の子でいっぱいになるなんて気持ち悪い、ってみんな言うんですもの。分からなくない気持ちだけど、でもやっぱりおかしいって。笑って笑われて、悔しくないなんて言えばそれは嘘だろう。肯定してほしかった。否定なんてしてほしくなかった。受け入れて、わかりあって、そんな平和な日々を想うことも、おかしいと言うの?気が狂いそうだよ、この場に立っていられなくなりそうだよ。倒れて喘いで、息が止まってしまいそうなんだ。本当だよ。

こんなわたしでも、きっと正常に戻れるはず。わたしはだって、人間。みんなと同じ造りをした人間なのだから、救われたいと願ってしまう。他人から否定はされたくない。きみに否定されたい。そうしたら現実を受け入れようとしないこの頑固な脳にだって血が流れるはず。たった一言、「お前なんか嫌いだ」って言ってくれれば、きっとわたしは人に戻ることができたでしょう。だけど、いつだってきみの優しさだけが辛かった。少し寂しそうな、切ない微笑を浮かべ、「俺は名前が好きだよ」なんて言うんだから。頬を伝っていったそれは、一体何ていう名称だったかな。分からないときは、困ったときは、きみの名前を呼ぼうって、きみを好きになったときから決めてたわ。「     」


声にならない声が響いた。小さく消えた。あぁ、もういいや。


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