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「なぁ、そこで死んでる名前は一体どうしたの?」
「死んでるなんて言わないで水鳥さん」

確かに人様から見れば、机に突っ伏し動かないわたしを死んでいる、なんて言うのかもしれない。でもこれはあくまで項垂れているだけ。わたしはちゃんと息をしている。それに、そう簡単には死ねはしない。まだ、やりたいことがいっぱいなんだから。

「で?土曜の朝から部活で忙しい茜に電話までして、お前は何がしたいわけ」
「色々あったんです……」
「ほぅ話してみなよ」

言われなくとも、わたしは話していた。だけど水鳥さんがそう言ってくれて、少し安心した。あぁ、聞いてくれるんだなぁって。
昨日の雨で事情により家に入れず倉間くんの家に泊まらせてもらったことを包み隠さず話してみた。……ついでに倉間くんからはっきり友だちとしか認識されていないことも。何度言葉にしてもショックだった。話が終わってうつむきかけていた顔を起こす。茜ちやんも水鳥さんも、苦い表情をしているのだろうか。だけど目に映ったのは、口を半開きにし、驚いた表情を見せる二人だった。開いた口が塞がらないとはこのことか。

「茜ちやん…水鳥さん…?どうしたの」
「いや、あのさ、どうしたのってこっちの台詞なんだけど」
「え?」
「お前、倉間ん家泊まったのかよ?!」

え、突っ込みどころそこなんですか。わたしの反抗なんて無視し、水鳥さんは詰め寄る。何だか迫力があって少し怖い…、のが本音だった。そんなこと口が裂けても言わないが。お前すごいな!なんて、耳元で大きな声出さないで下さいよ。わたしは耳を塞げないまま、直にその攻撃を食らってしまう。ああ、耳が痛い。

「何だよ、お前ら進展したのか!」
「え、あの、逆です。友だちとしか認識されてません…って今言いましたよね?!聞いてなかったんですか?!」
「え、いや、だってお前」

全然平気そうな顔してんじゃん。普通友だちだからって、男子の家になんか泊まらねぇよ。泊まったとしても、お前の場合パニックになるし。そう考えれば、お前随分平気な顔してる。……水鳥さんの言っていることは、本当なのだろうか。ショックだったはずだけど、本当は違うってこと?自分の顔なんて、人から見た視点でしか分からないもの。わたしはきっと、水鳥さんの言う通り、平気な顔をしてるんだ。あんなこと言われたのに?平気ってどういうこと?答えは簡単だった。

「わたし、本当は倉間くんのこと好きじゃないのかも」
「…はぁ?」

水鳥さんの呆けた声が辺りに響いた。茜ちゃんがクスリと小さく笑っていたのは、きっと気のせいだろう。


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