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試合が終わった。結果は2−1で雷門サッカー部の勝利となった。本当は早く帰りたいのだからさっさと風丸さんに会って、昨日押しつけられた本を押し返してやろうと思ったのに……サッカー部は今、勝ったからか色んな生徒に取り込まれ歓声の中にいる。あの中を無理に押し入って会うつもりは毛頭ない。そんなこと、わたしには出来るはずがなかった。だから、少し収まってから行こう、そう友だちに呼びかけようとしたが無駄だった。どうしてこう言うときだけ、わたしの友だちって勇ましいんだろう。
行くよ名前ちゃん、と強引にわたしの手を引っ張りサッカー部員たちがいるグランドへ降りていった。やだやだ、恥ずかしい!人混みの中をやはり強引な力で避ける姿を、周りの人から白い目で見られている気がした。いやだいやだ、こんなことしたくない。恥ずかしい、帰りたいよ。俯いたままのわたしが顔を上げたとき、そこはすでにサッカー部員の皆さんがいる輪の中だった。

「あら、名前ちゃんじゃない!どうしたの?」
「え、えっとその」

同じクラスの木野秋ちゃんがわたしに声をかけてくれる。上手く説明できなかった。人混みを分けてまでここに来た理由。そう、それは――

「か、風丸さんに渡したいものがあるんです…!」
「え、俺?…あ、昨日の…」

わたしを目にして思い出してくれたらしい。そうです、昨日あなたが本を押しつけた名字です。そんな嫌味の含んだ自己紹介をしようとしたとき、誰かの元気な声が響いた。彼は確か、そう、円堂くん。サッカー部のキャプテンだ。わたしも、あそこまで有名な人なら、名前と肩書きくらいなら覚えられる見たい。

「よしじゃあみんな、今から響監督んとこ行こうぜ!」
「おー!」
「え、ちょ、待って。え?」

戸惑いの声は誰の耳に入ることなく、サッカー部の人たちはぞろぞろと校門へと足を向ける。このまま帰る、ってことなのだろうか。いや、ちょっと待ってよ。わたしまだ風丸さんに渡してないのに。――そう思っていたのも束の間、風丸さんの姿は円堂くんの横へと移動していた。なんて言うことだ、わたしの話は完全に無視、と言うことか。呆れた、いや幻滅と言うのだろうか。男の子って、普通にこんな風なの?そりゃなかなか本題を出さなかったわたしも悪かったのだろうけど、でも、こんなのって……。肩の力を落とし、項垂れる。もう、いいや。小さな反抗なんてしないで、素直に本を返してあげれば良かったのかな。

「なぁ、きみさ」
「え、はい。あ、風丸さん」
「今から雷々軒っていうラーメン屋行くんだけど、きみも来る?話ならそこで、ゆっくり聞くから」

戻って来てくれたことは嬉しかった。話を聞いてくれるという言葉も嬉しかった。でも、雷々軒に行くって、どういうことですか?


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