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突然の委員会で帰れなくなったから、ごめん。先帰っていいよ。要点だけを着実に伝え、トウヤくんは人混みの多い廊下を歩いて行った。彼の後ろ姿が完全に消えてから、わたしはやっと息を吐く。そうか、委員会か。なるほど、だったら仕方ないか。責める対象がそれじゃ、わたしも大人しく引き返す他ないだろう。だけど先に帰れと言われて本気で帰るわたしじゃない。持っていたスクールバッグを机の上に置き、彼の委員会とやらが終わるのを待っていることにする。何か退屈なこの時間を埋めるものはないかと辺りを見渡すけど、教室はこういう肝心なときに物がない。仕方ないから黒板をきれいに掃除してあげよう。本来ならそれは日直の仕事だか、まだ詰めが甘い。わたしが、きれいにしてあげようじゃないか。えらいなぁわたし。





何時間経ったのだろう。いや、実質何時間と言うほど経ってはいない。だってわたしがこの教室にいる時間はトウヤくんが委員会に出ている時間。委員会に、何時間もかからないだろう。でも、確かめようとは思わなかった。否、思えなかった。わたしの思考回路はあまりよろしくないみたいで、目の前にいきなりトウヤくんの顔が映ったことに、酷く心臓が跳ねた。

「と、トウヤくん?何、してるの?」
「お前こそ何してんだよ。口から涎出して気持ち良さそうに」
「えっ、涎?!」

慌てて拭おうとしたが、トウヤくんの「うっそー」の一言で動作は当たり前のように止まる。一体トウヤくんは何がしたいと言うのか。……気付いて目をやった時計が指す時刻は夕方の6時。とっくの昔に委員会とやらは終わっているはず。わたしはいつの間にか寝てしまっていたようだ。

「トウヤくん!お、起こしてくれればよかったのに」
「だって名前は気持ち良さそうにねてるし、起こさないでやったんだよ」
「意味分からないよ。帰る時間が遅くなったんだよ?」
「お互い様だろ」

俺は委員会のせい、名前は寝てたせい。確かにお互いがお互いを待っていたせい。だけど明らかにその時間はわたしの方が長くて、「お互い様」と割り切るトウヤくんに申し訳ない気がした。でも一言、待っててくれてありがとう。帰ろ。と言われたら、もう気分は最高にいい。今から、同じ空の下を平行にならない肩を並べて帰りましょう。



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