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空を見ていると、自然に溶けてしまった感じがして心地が良かった。このまま飲み込まれて消えていければいいのに。そんな冗談も通じぬまま、吹雪くんの冷たい手がわたしの頭を小さく小突く。冗談でも言っていいことと悪いことがあるんだよ。なんてそんなこと知ってるよ。わたしだって、いつまでも子供な訳じゃないんだから。それに、わたし吹雪くんほど弱い人間じゃないからさ。あはは、と笑った声は小さく夜空に消えていく。

「きみはおかしなことを言うんだね」
「何が?」
「別に。何でもないよ」

おかしいの。なら、呼ばなくていいのに。段々冷え込んできた夜中の空に、今わたしは、吹雪くんは何を考えるのだろう。何を、思っているんだろう。今日食べたことご飯のこと、今日習った授業の内容。浮かんでくるもの全てがどうでもいいもの、なんて言ったらまたきみは怒るのかな。冗談でも言っていいことと悪いことがあるんだよ、とまたわたしを小突くの?でも冗談じゃなくて、本当にそうなの。目の前に流れていく風さえ、冷たいと思えてもその程度。……風って、好き?短く、小さく呟いたその質問も、彼は聞いてくれていた。一瞬だけ戸惑って、悩んで、うんとやっぱり短い答えを返してくれる。じゃあ、雪って好きですか?どうして敬語なの、と笑われるけど、わたしもよく分からない。あれ、どうしてわたし今敬語になったのだろうか。

「雪も、風も好きだよ」
「そうですか」

わたしは、好きでもなければ嫌いでもないよ。感じることは出来ても、それ以上は何も浮かんでこないや。でも吹雪くんが答えてくれた一言一言だから大切にしまっておこう。きみがくれた綺麗で優しい言葉を、ノートに書き留めて大事に残しておこう。こんなことして滑稽かしら。わたし、そればかりやっていてつまらなくないのかしら。それでも綴ることしかできないのです。ごめんなさいね。



企画・猫背さま提出


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