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想いに気付いたのはいつの日のことだろう。そのことさえ記憶に残ってない、それはそれほど前に、自分はきみのことを意識し始めたということ。なのにきっと、きみは何一つ分かってないんだろう。俺が何を言っても、どんな行動をしても「どうしたの、倉間くん」といつもと変わらない声で、優しい瞳で、問いかける。甘く残酷な一言だ。どうせ俺がいつもどんな風にお前を見てるかなんて知らないくせに。

想いに気付いたのはいつの日のことだろう。もう、忘れてしまった。幼馴染みの名前とはいつも一緒だったのに、こんな感情を抱いたのは俺だけなんて、世界は理不尽だ。待っていなくてもそこに立っている名前の背中。待っていなくても、自然と速度を合わせている帰り道。

どれもこれも俺だから、なんて考えれば自惚れだ。馬鹿だろう、自分を嘲笑いたくなる。

「倉間くん今日も部活お疲れさまー」
「おう」
「見てたよ。シュート決まったね」
「へぇお前いたのかよ。気がつかなかった」
「うわ酷い。結構目立つところにいたのになぁ」

残念そうに空を仰ぐ名前に、出てくるのはため息だった。何だよ、それ。見つけて欲しかったのかよ。ホントは俺だって見てたよ、シュート決めたとき、喜んだ顔してた名前をちゃんと見つけたよ。だけど、そんなこと今言っても、何にだってならねぇだろう?
虚しさが心を覆っても、絶対こいつの前には見せてやらない。俺の本当の気持ちも分からねぇのに、本音の顔なんて見せてたまるか。幼馴染みには、幼馴染みだけでいい。気がついてくれないなら、それでいい。もう、いいんだ。

「倉間くんはかっこいいよねぇ。わたし、倉間くんのこと自慢しちゃう」
「ふーん。するんだ」
「うん、大切な幼馴染みだよ、って」
「ふーん」

その代わり、少しの間はとなりでいたい。一番近くで、一番に名前の声が聞こえるその場所で。いつか諦めが来るのは俺自身からか、それとも名前が俺に諦めさせるか。どっちかは分からないけど、ずっときみの大切な幼馴染みでいたい。



企画:となりさま提出


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