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※学パロ


「名前、今日どうせ暇でしょ?」
「え、うん」


ホームルームが終わり、帰ろうと気持ちを切り替えたとき、チェレン君に呼び止められた。何かと振り返り、差し出されたのがボールだと理解する。はて、何故ボールなのだろうと考えても、その前にチェレン君から答えがもらえた。
昼放課、クラスの女子たちが遊んで、返してきてないんだって。それをどうして私に頼むのだろうと思って、答えは直ぐに出た。
要するに、体育委員のチェレン君には面倒臭いんだろう。他人の始末を自分がしなくちゃいけないんだから。


「それで、私に頼むの?」
「暇でしょ」
「暇だけど…なんか暇だと思われてることが気にくわない」
「僕用事があるんだ」
「…分かりました。やればいいんでしょ」


ボールを受け取り、荷物は教室に置き、体育倉庫へ向かう。途中、トウコちゃんに会って「トウヤ知らない?!」って聞かれた。さぁ、と短く答えておく。気まぐれなトウヤ君の居場所なんて、私知らないよ。





体育倉庫に着けば、せっせとボールを籠に入れ、帰ろうと思っていた。だけど、何でか、足が止まった。
きっとこれは全部、トウヤ君のせいだと思う。トウヤ君が何故か、積み重ねられたマットの上で寝ていたから。何でか、抜け出せなくなってしまった。じーっとその寝顔を見つめ、自分のしていることが恥ずかしいことだと気付く。そういえばトウコちゃんが探してたっけ。教えてあげなきゃ。
だけど――。


「あれ、開かない…?」


ドアが開かなかった。力を込めても、びくともしない。どうして、どうしよう。自分が何をしたのかも理解出来ないまま、いきなり声がかけられる。


「そこのドア、乱暴に閉めると開かなくなるんだよ」
「と、トウヤ君?!」
「お前さっき乱暴に閉めてただろ」
「あの、いつから起きてました…?」
「お前がここに来るときから」


さいですか、と相づちを打って、頬がどんどん赤くなる。じゃあさっき、トウヤ君の寝顔に見入ってしまっていたことも、もしかしてバレてる…?何か、言われるかな。いや、絶対言われるだろうな。だってトウヤ君だから。


「そういえばさっき、トウコちゃん探してたよ」
「ふーん、じゃあその内出られるな」
「よかったね」
「そういえば名前、お前さっき俺の顔ずっと見てたよな」


ほら来たよ。来るとは思ってたけど、いざこうして聞かれると動機が半端なく鳴っている。出来心、とか何とか言い訳するか。トウヤ君には通用するとは思わないけど。


「だって、何か、珍しかったから」
「ふーん」
「不機嫌そうですね」
「だって本当のこと言わないじゃん?」
「…」
「言えばいいのに、俺のこと好きだって」
「…!」


あぁもう嫌だ。帰りたい。っていうか、早くトウコちゃん来て欲しい。好きだけど、どうしてそんなことがばれてるの。隠せる自信あったのに。だって同じクラスで、ちょっとは喋るけど、接点なんてあんまりないし。
けど結局はトウヤ君には全部分かってる、ってことだろうか。人のことよく見てるというか、何というか…やっぱりトウヤ君ってすごいんだなぁ。



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