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「おばさんのご飯おいしいねー倉間くん」
「俺は毎日食ってる」
「え、ちょっと倉間くん。何ニンジン残してるの」
「…嫌いなんだよ」
「そうやって好き嫌いしてるからいつまでもちっちゃいままなんだよ」
「お前も俺とそう変わんねぇだろ」

正直、不思議に思うくらい名字の機嫌はよかった。気持ち悪いと思うぐらい明るく楽しそうだった。どうしたんだよ、とは聞かない。どうせ聞いても理解できないし、理解したくもない。…もしかしたら、ついに早起きし過ぎて気分ハイになったのか。バカだよな、最近俺に合わせて起きてるからだよ。ばーかばーか。何度もそう心の中で呟いてやり、無意識の内に睨み付けていた。大体、いつまでうちにいるつもりなんだよ。
本人は何も気にしていないかのように母さんの手伝い何やらをしている。何であんな風に普通なんだよ腹立つ。じゃあ何で俺はこんなに普通じゃないんだ?

「ねぇ典人、今何時か分かる?」
「…10時」
「え、早っ。…まだ、お父さん帰ってないんですけど」
「帰れよ。どうせ隣だし、ベランダから飛び越えて行け」
「倉間くん、仮にもここ5階なんですけど。それ遠回しに死ねって言ってますか?」
「簡単な話よ、名前ちゃんを今日家に泊めてあげればいいのよ」

ちょっと待て。俺の母親は一体何を口走ってるんだ。泊める?名字を?ふざけるな、こんなやつ泊めたら、こっちにバカが移っちまう。勘弁してくれ。一人げんなりとした顔でいても、話は勝手に進んでいく。結局名字は泊まるとか。ホントめんどくさ、明日朝練あるのに……なんか、無性に腹が立つ。





「ねぇ典人、あんた名前ちゃんとどういう関係なの?」
「は?」

だって典人が家に女の子……しかも名前ちゃんを連れてくるなんて、すっごい久しぶりじゃない?あんたたち、仲いいの?名字を風呂に送り出し、自分の部屋へ行こうとしたとき、母さんが俺に質問してきた。何でそんなことを聞くのか、意味のないように思えるそれに、なんと答えてやろう。悩む必要はない、答えはただひとつ。

「名字は友だちだって」

幼稚園からつるんでる、それなりに仲がよくて、多分大切な友だち。……多分、きっと多分。


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