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仲の良い友だち…という関係の名前はゲームが好きな奴だった。俺が特別用がなくても人の部屋に入り、何をやってるのかと思えばゲーム。
俺が雑誌を読んでたり、名前に話しかけなければ、きっと延々とゲームをし続けているんだろう。別にそれについてどうこう言わない。好きなことをやればいいと思う。ただ音量を最大にしてうるさくしないで欲しい。流石に邪魔だったのでこの間怒ったけど。
邪魔しないでくれたら、基本何でもいいと思ってた。名前が俺の家に何の用もがなくても来てくれることにも最近嬉しさを感じる。友だちなんて言ったけど、そんなこと本気で思ってるのは名前だけ。俺はもっと深い感情を持ち合わせている。

その日も変わらず俺のベッドに勝手に寝転がり、ゲームをしている名前。俺も構わず、雑誌を読もうとしたとき、いきなり名前が「あ゛ー!」と奇声を上げた。心臓が一段と高く跳ね、とりあえず声をかけてみる。


「ど、どうしたんだよ」
「あーあ!ゲームオーバーになっちゃった…もう少しでクリアだったのにぃ」
「何だよ、そんなことかよ。変な声出すなよな」
「あはは、ごめん」
「…プレイし直さないの?」
「んー集中力切れちゃったから。ちょっと寝ころんでる」


そう言って確かに名前は寝ころんだ。…俺のベットで。もうちょっと恥じらいとかそういう感情を持てないのか。何で俺だけこんなにも恥ずかしいんだよ。バカみたいじゃん。


「…ねぇユウキ君」
「何」
「もしユウキ君が悪いモンスターに攫われちゃったらさ、私が助けに行ってもいい?」
「…は?」


一瞬、思考が停止した。何を言ってるんだろう名前は。未だ理解しきってない俺の頭を可哀想に思ったのか、もう一度今の言葉を分かりやすく名前が繰り返す。だから、ユウキ君が囚われの身になったら、助け出すのは私でいい?って聞いてるの。なんて、なんか名前にそんな風に言われると腹立つ。


「い、意味分かんねぇし。何で俺が捕まるんだよ」
「んーユウキ君だから?」
「もっと意味分かんねぇ。それ普通逆じゃね?俺が助けに行くんだろ」
「囚われの王子様って面白いじゃん」
「お前の面白半分のために俺で遊ぶのやめろよ」
「遊びじゃないし」


不意に声を低くして、名前がそれを否定した。名前がこんな風に喋るなんて、珍しい。ちょっとだけびっくりして、身構える。その後出てきたのは名前の本音だったのかもしれない。


「私、真剣だよ。遊びじゃないよ。もし本当にユウキ君が危ない目に遭ったら私は助けたいって思うの」
「…」
「ゲームだとリセットできるし、やり直しも出来るけど、私たちが生きてるのは一度きりの人生だよ。その中でいつでもユウキ君の味方でいたいって思うのに、遊びも面白いもないからね」
「…」


言葉が出なかった。何これ、喜べばいいのか、それとも照れればいいのか、あるいは両方の反応を取ればいいのか。俺の頭は混乱してるだけ。半分告白とも受け取ってしまったそれは、ただの自惚れですか。


「な、何だそれ。じゃあ俺いつでも名前の味方でいたい、って言ったら名前はどうするの」
「…大歓迎だよ。だってユウキ君のこと大好きだもん」
「…あっそ」


さっきのは自惚れじゃないと思っておこう。だけど、確かめはしない。恥ずかしいし、今の言葉で、もうそれだけで十分な気がしたから。


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