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その日、身体を襲う怠さや重い気分のことを考えて大学は休んでしまった。どうしても行く気になれない。心の何処かで、別にいいじゃんと諦めている自分がいるんだろう。顔は洗ったし朝食も食べた。だけど何もする気にならないからそのままベッドへダイブする。もう一度寝るなんて、きっと疲れている身体にはいいのかもしれないけど、学生がこんな真っ昼間から寝ていていいのかなんてことで迷ってる。そんなとき、電話が鳴った。誰だろう、と見てみれば表示された名前は吹雪くん。…どうして、こんな時間に彼が電話なんてしてくるの?でも、無視するわけにはいかない。平静を装い、通話ボタンを押す。


「もしもし」
「あ、名字さん?今日休んでどうしたの」
「え、あなたは…」


それはあの合コンで吹雪くんと話していた人だった。名前は……覚えてないけど、とりあえず吹雪くんの友人と考えればいいだろう。だけどそんな人が、わたしに何の用?それに、どうしてわたしが休んだって知ってるの?ううん、それ以前に、この人がどうして吹雪くんの携帯からわたしに電話してくるの。疑問は幾つも浮かんでくるけど、それより先に相手から質問がやってくる。


「吹雪とケンカしたって、本当?」
「何でそんなこと知ってるの」
「吹雪本人から聞いたんだよ。名前ちゃんとケンカしちゃった、って」
「そんな軽いものじゃないのに…」
「まぁまぁ」


彼の口調や雰囲気を聞いていると、何だか軽く取られているとしか考えられない。今日の朝の、あの静かな雰囲気は何だったっていうの。わたしだって、そんな軽い気持ちで別れを切り出した訳じゃないのに。だけど吹雪くんはきっとそういう人なんだよなぁなんて思っている自分もいた。あぁ嫌だ。


「吹雪からさ、名字さんが合コンに遅れて帰ったことを怒ってるって聞いたんだけど」
「…そうなんだ」
「あいつが遅れて帰ったのって、殆ど俺のせいなんだ」


あの後酒飲んでフラフラな女子を家まで送ってってやれって俺が頼んだんだ。そしたら、そいつが吹雪に抱きついたまま離さなくて。それで色々時間食っちゃって、気付いたらすげぇ遅かったってことなんだよ。吹雪は「もうこんなこと頼まないでね。待たせてる人がいるんだから」って俺に言ってた。…彼は必死に、そう話す。自分がそうやって吹雪くんに頼んだからって、負い目を感じているの?でもね、それならそうと、あのときちゃんと離してくれればよかっただけのことなの。


「その…、吹雪と仲直りしてやってくれね?」
「うん」


そのうちね、と一言足して電話を切った。どうしてわたしたちって、こうやってすれ違うんだろう。今日の朝、きみと別れたいなんて言ったのに、いざ離れて分かることもあった。吹雪くんに、会いたい。話したい、声を聞きたい。名前を呼んで欲しい。結局最初から、わたしは吹雪くんのことどうしようもなく好きだったの?

留めどなく溢れてくる気持ちを、わたしはなんと呼ぼう?


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