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「きっと夢は風船よ」
「…は?」


いきなり意味不明なことを言い出すのは珍しいことじゃなかった。どきどき哲学的なことを言い出すのかと思えば、空想としか思えない発言もする。きっと名字は電波なんだろうと納得した時期もあった。でもしっかりしてるところはしっかりしてる。まぁ俗に言う不思議ちゃんってやつだろう、と納得してしまえばもう悩むこともなかったはず。
でもやっぱり変な発言が消えた訳じゃない。


「…で、今日はどうした」
「夢はきっと風船のようにどんどん膨らんでいくね」
「…」
「どうしてそんな目をするの不動くん」


呆れの色が滲み出ていたか。名字は頬を膨らませ怒った様子を見せるが、なんか全然怖くない。こいつ俺を舐めてるのか。


「…あのさ、それ破裂したらどうすんだよ」
「それは夢に追い付いたとき」
「普通逆だろ」
「ねぇきっと不動くんは今、風船を膨らませてるとこだよね」


おい無視するなよ、と今言ってもどうせ通じないのは分かってた。だから大人しく名字の話を聞いてやる。本当は名字の意見なんて全否定してやりたいけど。


「不動くんは今、夢に向かって頑張ってる最中だもんね」
「そんな大層なもんじゃねーよ」
「でもかっこいいよ」
「勝手に言ってろばーか」


いつものことだから、おれは慣れているつもりだった。名字が変な発言をして、おれが応える。答えてやってるんだから受け入れればいいだけなのに、どきどき名字は面倒なやつになる。目尻を下げ、落ち込んだようにおれを見る。…なんかおれが悪いみたいな感じが腹立つ。


「…なんだよ」
「いや、不動くん怒ってるのかなぁって」
「別に」
「ごめん、大人みたいことが言ってみたかったの」
「はっ、何が大人だよ。ガキじゃん」


そう言って名字の唇に食らいつくよいにキスしてやった。全部こいつが悪いんだよ。


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