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チャリンチャリン、小さく鳴った鈴の音は、お店に誰かがやって来たことを知らせる合図だった。カウンターから顔を出し、お決まりの台詞を放つ。「いらっしゃい」――どうやら、常連さんのようで、わたしはその人の顔をよく見ているものだ。今日はどうなさいますか?、いつもの頼むよ、分かりました。短いやり取りをしてから、その人の言ういつもの、の用意をする。

「今日も一日お疲れさま」
「あぁ、ありがとう名前ちゃん」

言葉と温もりを持つブレンドをジョーさんに手渡し、わたしはカウンターに戻っていった。途中、「そういえば、名前ちゃん」と呼び止められ振り向くと、ジョーさんの笑った顔が目に映った。

「クルトが、もうすぐ帰ってくるよ」

嬉しそうにその名前を口にし、またブレンドを口に含む。はて、クルトって一体誰だったかしら。


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