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朝、鉄道員たちの出席をとるのも仕事のひとつだった。だから誰よりも早く出勤しなければならないし、仕切らなければならない、今日も同じ出席をとり、来ていない人間の名前を確認していく。そこに連続して印してある奴の横に、今日も同じ印をつけなければならないことに頭が痛くなった。こいつ今日も遅刻かい。

「クラウド。あなたに頼みたいことがあるんですが」
「あぁボス。何ですか」
「さっき電話があって、カズマサが迷子になりました」
「…いつものことですわ」
「迎えに行ってあげてください」

いつもいつも、何で俺なん。呆れと疲れとその他の感情がどっと溢れてくる。だけど上司には逆らうことができない、迷子になったあのアホを放っておくこともできない。どこにそいつおるんですか、と聞いてみれば、きっとあなたなら見つけられると信じてます。お願いしますよ、と言い残して行ってしまった。答えになってへんし。しかもそれ手がかりなしで探せってことやん。あぁ、もう、ホンマめんどくさ。





電話が鳴ったのはカズマサのバカを探してから2時間後のことだった。相手はなんとそのバカから。何今頃電話してきてんねん、しばくぞドあほ!と怒鳴りたいのはやまやまなのだが、今は抑え通話ボタンを押す。聞こえてきたのはカズマサの明るい声。何でこいつこんな上機嫌なんや。

「どしたんカズマサ。つーかお前今どこにおるん」
「あ、クラウドさん!僕今バトルサブウェイにいます」
「なんやとぉ?!一人で行けたんか」
「あ、そうじゃなくてある女性に連れてきてもらったんです。それでその人、クラウドさんに用があるからっていうんで、今すぐバトルサブウェイに戻ってきて下さーい」

誰のせいでバトルサブウェイにおらん状態になってると思てんねん。何が戻ってきて下さーい、や。ホンマ腹立つわぁ。あとでこいつマジしばいたろ。
背やけど俺に用のある女子なんて、身に覚えあらへんがな。





バトルサブウェイに戻ってきたとき、迎えてくれたカズマサはやはりイラつくほどご機嫌だった。何でも案内してもらった女性にミックスオレを買ってもらったとか。そんなことで喜んで、お前はガキか!と一発殴りつけ持ち場につかせる。これ以上サボってもらうと俺が叱られてしまうわ。
その場にいた女性は軽く会釈して笑う。見覚えのある顔やった。

「あんた…どこかで会うた?」
「昔ちょっとだけ。その時にクラウドさんが忘れたものを届けに来たんです」
「せやったんか。わざわざすまへんなぁ」

渡してくれたのは確かに少し前に失くした時計。それを渡すと彼女は「じゃあ失礼します」と言い残し、去って行った。握りしめた時計を見つめ、ふと思い出す。待てよ、これ失くしたの半年ぐらい前やん。何でそんなの今更持ってくるん。なんか気になんねんなぁ。


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