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好きなんだ、付き合ってくれないか。そう言われて嫌気が指すなんてことはまずないだろう。相手は学校内でも有名で、モテる。そんな彼の誘いを断る方がどうにかしてるんだ。嫌いじゃなかった。断る理由も、なかった。だから受け容れたというのに。何が違っていたんだ、何が間違っていたんだ。身動きできない手首が痛い。ねぇ何がいけなかったのかな。わたし、何をしてしまったのかな。それすら分からないわたしに、きっと吹雪くんは答えを教えてくれない。いたいよ、吹雪くん。


「名字さんがいけないんだ」
「…何を言ってるの」


訳分からない。触れた唇から流れるそれも分からない。溢れる涙も分からない。


「中途半端な想いで、答えて欲しくなかった」


ただ一言、そう言った吹雪くんが悲しそうだったのはこの廃墟が寂しいからなんだ。響くことない声は、無駄にわたしの中に残る。ずさり、と鈍い音を立ててわたしの心に突き刺さってくるそれは、歪んだナイフ。そんな鋭利で歪んだものじゃ、痛いでしょ。
痛いよ、吹雪くん。だけどその声は届かない。何度呟いたって、何度叫んだって、今の吹雪くんには届いてくれない。こんな状況、誰が作ったの。わたしでしょう。まだ、早かったんだ。確かに軽い気持ちで答えたかもしれない。わたしはちゃんと、彼のこと好きになれてなかったんだね。悲しい?ねぇ、吹雪くん悲しい?
でもね、わたし意外と平気かもしれないよ。だってわたし、吹雪くんのこと好きだったもの。なーにも悪いこと、してないわ。いつの間にか、こんなにも好きになってたんだよ、きみのこと
だけど赤いものが見えたの。あれ気のせいだよね。


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