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あなたに手紙を書こうと思うんですが、どう思いますか。彼女は変わらない表情、静かな瞳でそう語った。送りたきゃ勝手に送れよ。ぶっきらぼうな答え方に名字はやはり静かに頷いた。あなたから許可を頂いたので送りたいと思います。内容はどのようなものがいいですか?と、バカみたいな質問に切れそうになるのは仕方ない話なんだ。そんなこと聞くんなら、最初から手紙なんて送ろうと思うなよ。内容の分かった手紙なんて、受け取っても嬉くねぇ。気に入らない気に入らない。あぁくそ、苛ついて仕方ない。


「不動さん、何を怒ってるんですか?」
「怒ってねぇよ」
「でも今舌打ちしました」


気付かないうちに漏れた不満には敏感に反応するくせに、肝心なところは鈍い。鈍感といえる、でももっと厄介で付き合いきれないこの鳥頭に、どう教えればいいのか。こんなめんどくさい奴とどうして俺は会話してやってるんだろう。いつからそんな、“いい奴”になったんだろう。


「頼むからさ、自分で考えてくれよ」
「…分かりません。分からないから、聞いてるんです」
「もういいよ」


意図的に舌打ちを、名字に聞こえるようにして部屋を出る。今、名字がどんな顔をしているかなんて知らなかった。…知りたくなかった。どうせ悲しんでないんだろ、辛いとか思ってないんだろ。俺なんていなくても、俺に答えを求めなくてもお前は平気なんだろ。
惨めとは思わない。悲しいとは思わない。結局俺もお前と一緒だ。求めて欲しいけど、自分から求めない。申し訳ないとも思わない。自分勝手だな。だけど。


君に笑い方を教えたかった
本気でそう、思ったんだ


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