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「名字さんは僕のこと、本当に好きなの?」
「好き、だよ」


吹雪君はいつも唐突だった。いきなり好きだよ、って告白してきたかと思うといきなり抱きついてきたり、いきなり髪を触ってきたり。そんな小さな行動ひとつひとつに私の鼓動はいつも高鳴るばかり。お願いだからもう少し私のことを考えて欲しい。
だけど吹雪君は気にしない。どうして?って。僕がしたいと思ったから、したんだよ。名字さんも、嫌じゃないでしょうって。確かに、嫌悪を感じたことはないけど、人前でやらないでほしいの。ただでさえ吹雪君モテるのに。
だけどやっぱり――吹雪君は気にしてなかった。その揺るぎないところも好きだし、唐突でも好きを行動で表してくれるのは嬉しい。だからこそ、時々彼を疑うなんてバカな真似をすることさえある。軽口のように言葉を囁くあなたに、本当に私を好きという気持ちがあるんですか?


「名字さん、最近よそよそしい」
「、かもしれないね」
「どうして」
「だって私、吹雪君とこんな関係になりたかった訳じゃない」
「え?」


怪訝そうな顔をする。そりゃそうだよね。想いが通じて付き合った当時は本当に嬉しかったし、心も踊るような日々を過ごしていたと思う。だけど最近その日々に嫌気がさしてきた。だって私はこんなことを楽しみたかった訳じゃない。
あなたを好きでいることを誇りには思う。だけど、愛を囁かれたかった訳じゃない。片思いでもあなたを想っていた日々が愛おしい。何も望まずに、あなたから言葉を贈られるような近すぎる存在はいや。いつか、見失ってしまいそうで怖い。


両片思いを希望します
(切なくても、)(あんたを見つめられる)



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