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もうあと少しで終わるから、ちょっとだけ待っててくんね?と彼は笑った。頷いてからグリーンの部屋で待機させてもらう。まだ、挑戦者が来ているのだろうか。日はとうに暮れた時刻なのに、こんな時間にも何処かにグリーンとバトルしたいと思う人がいて、それに答えて…毎日、大変そうだなぁ。実際グリーンのしている仕事がどういうものなのかをよく知らないわたしみたいな存在にとって、他人事のようなもの。きっとこれを聞いたら、グリーンは拗ねるかもしれない。あぁ早く終わらないかな。


「…名前、ごめん待たせた」
「あれ、もう終わったの?」
「うん、だって別にバトルじゃなかったし」


だから早く帰ろうぜ。本当はその台詞はわたしが言うべきものだったのに、グリーンに先を越された。そっと差し出された温かい手を握り、明かりの少ない暗い道を二人で歩いていく。少しだけ肌寒くて、先が見えない暗闇で、でも不思議と歩くペースはいつものまま。気持ちはとても落ち着いていた。


「あーそろそろ寒くなり始めたな」
「そうだね。手袋欲しくなってきたなぁ」
「そういえば名前って手袋持ってなかったよな。俺がやろうか?」
「え、本当?」


わーいプレゼントだー!と子供のようにはしゃぐ年齢ではないことを自分でも分かっている。だから笑って、その好意を受け取った。何色がいいかとか、どんな形がいいかなんて頭では考えてしまっているのに。やっぱりわたしは子供なのだろうか。
でもグリーンって忙しいから、きっとそのうち忘れてしまうのかもしれないね。わたし自身きっと忘れそう。だから今ここで約束しよう?これからきっと、もっと寒くなる。だからその前にグリーンは私に手袋を買う。指切りげんまん、しよう。その一言に子供くさ、と言われることを予想してたけど、彼は優しかった。
小指に絡まる大きく温かな彼の小指。ぎゅっと握り、わたしたちは指切りげんまんをした。もっと幼いときだったら当たり前のようにしていたそれを今になってするのは恥ずかしい。だけど、全然そんな気がしなかったのはきっと、グリーンが笑ってくれていたからだ。
触れた小指が嬉しそう。わたしも、嬉しそう。



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