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※吹雪視点


僕が帰ったとき、まだ家に電気は点いていた。こんな時間まで、彼女は起きているのだろうか。浮かぶ疑問を静かにうち消し、「ただいま」と言って中へ入っていく。…確かに彼女は起きていた。服はあの合コンに着てきたもののままということはまだお風呂にも入ってないってこと…?少なくとも帰ってから何時間もあったはず。その間、ずっときみはイスに座っていただけだというのだろうか。


「名前、ちゃん?ただいま」
「…吹雪くん。お帰り」
「まだ起きていたんだね。どうしたの、眠れないの?」
「吹雪くん、聞きたいことがあるんだけど」


真面目な顔の名前は僕を見据えている。その余りにも静かな目に何故だろう、身構えずにはいられなかった。合コンが終わってから、何してたの。と、そんな何でもないような質問をどうして投げかけてくるのか。そっちの方が聞きたかった。だけどあまりにも静かな雰囲気に、僕はそれを口には出せなかった。ただ無言を返すと彼女は立ち上がる。答えられないこと、していたんでしょう、って。その言い方に苛立ちも覚えながら、でも哀しみが溢れ出す。名前の言っていることは、きっと誤解なんだ。


「違うよ、きみは何を言ってるの」
「ねぇ吹雪くん。きっとわたしたち、別れた方がいいよ」
「え、」
「っていうかお願い、別れて」


懇願するように言う、囁く、その声は部屋に響く。答えられなかった。答えたくなかった。ぷつりと頭の中で感情の何かが切れ、想いが行動へと移っていく。力に任せて壁へと追いやった彼女の身体は小さな悲鳴を上げる。掴んだ腕に力がこもっていく、痛いと言われても、今は言うことなんて聞いてあげない。


「僕はそう簡単に、別れてあげないよ」


君を手放すなんて、出来やしない。


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