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「名前っていい臭いするよな」
「え、」


突然幻聴と思えるユウキくんの発言に体が硬直する。今、この人は何を言ったんだ?いい臭いがするだと?そりゃ私も女の子の端くれ。その言葉が嬉しくない訳じゃない。シャンプー昨日新しいのに変えたからじゃない?と、適当に答えておいたけど、内心すごく焦ってる。あ、そうか。これシャンプーとか関係無く、名前の匂いだ、なんてさらりと言ってしまうユウキくんに軽くイラッとしたのは気のせいだろうか。うん、きっとこれは気にしないでおいた方が勝てるっていうやつだな。
だけどユウキくんは止まることなく指を髪に通し、何やら遊び出した。これって訴えての怒られないのかな。


「ゆ、ユウキくん。警察呼ぶよ」
「は?何で警察。脅しにもなんねーよ」
「だって恥ずかしいもん!」


お、おと、おと、おとこのこに髪を触られるなんて、経験したことない。たとえそれが親しい間柄だとしても。沸いてくるのは羞恥心だけで、ユウキくんに何度言っても理解してもらえそうにない。どうしてだろう。私の髪を掬うと、そっとキスをする。どこでそんな行動覚えたんだユウキくん。


「ユユユユウキくん!!」
「何、」
「今の、何?!」
「…さぁな、知らね」


少し微笑みを浮かべ、彼は離れていった。ユウキくんって、変なところで分からない。私の知ってる人の中で、君が一番分かりにくい。



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