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あーあ。どうせなら最期もシロガネ山で迎えられればよかったんだけど、流石にそれは無理みたい。当たり前だよね、だってあそこ寒すぎるもん。お母さんとお父さんが余命短い私にシロガネ山への外出を許してくれたことだけでもすごいことなのに、贅沢言っちゃだめだよね。うん、分かってたよ。だからこれでバイバイだねレッド。言っておくけど泣かないでね。あ、でも一切泣かないのはちょっと寂しいから、ときどき私のこと思い出して泣いていいよ。なーんてね。シロガネ山での日々、すっごく楽しかったなぁありがとう!ほんと、多分今までの人生で一番輝いてたんだと思うなぁ。大好きだよレッド。あ、私実は幼稚園の時の将来の夢、お星さまになりたい、っていうのだったんだよ。笑っちゃうよね、まさか叶っちゃうなんて!私このシロガネ山から見えるきれいな星になって、レッドをずーっと見ているよ。


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名前はこのシロガネ山を去る最期までお喋りな少女だった。当分、いや永遠にその声を聞けないなんて思うと、やっぱり色々思い返すこともある。もっと名前がしたいと思うことやらせてあげればよかったとか。あぁでも名前はよくしゃべるくせに自己主張はなかった。だから、無理な話だったんだ。最期の最期、もう本当に最期、触れたくてたまらなくて名前に駆け寄り掴んだ腕は細くて白くてきれいだった。伝わる体温は僕の方が温かい。こんな冷たくなるまで、名前は笑っていたんだ。だけど今更そのことに対して何も感じない。冷たかったけど、だけど安心を覚えた。これ、名前なんだ、って。


「…ありがとう。僕も大好きだよ、名前」


もう一度駆け寄って伝えられたら、どんなに楽かな。


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