txt | ナノ

ここで待ってたら倉間が来るはずだから、逃げずに差し入れのそれ、渡すんだぞ?それで余裕があったら告ってこいよ。…相変わらず水鳥さんはそういうことを簡単に言ってくれる。こここ告白なんて、できるはずないのに。今日この差し入れを無事倉間くんに渡せたらいってほしい。あぁこんなこと考えても仕方ないんだから、今は手にあるレモンの蜂蜜付けが入ったタッパーを握りしめるだけ。不意に背後から名前を呼ばれた。それはまさしく倉間くん本人。

「名字…?」
「わわわ倉間くん!き、来てくれてありがとう!」
「俺に用があるのって、名字だったのかよ」
「あ、うん。えと、ごめんなさい」

あれ、私何に謝ってるんだろう。今の言葉に謝る要素なんて含まれていないはず。気をとりなおし、倉間くんを見つめる。この状態で私はゲームオーバーなんですけど。
持っているタッパーを押し付けるように差し出した。沈黙だけが空気を包む中で、きっと私の心臓の音だけがばくばく鳴っているんだ。ボーッとしてないで、早く受け取ってよ倉間くん。

「あの、これ私が作ったの!よかったら、あの、」
「分かってる」

え、今この人、何で言いました?分かってる?もしかして、何もかも?
神さまが仕掛けた隠しトラップを踏んでしまった、今そのことを深く後悔しよう。私って単純だから、倉間くんにバレていたんだ。頭の切れがいい倉間くんなら納得できる。恥ずかしさ半分、情けなさ半分。今穴があるなら潜りたい。泣きたいんですけど。

「名字って神童のこと好きなんだろ。だからこの間神童と差し入れの話してたんだろ。これだって、直接渡せねぇから、代わりに俺に渡すんだろ?そんなことなら早く言えよ。まぁこれはちゃんと神童に届けてやるから安心しろ!」

やばい、私本格的に泣きたくなってきました。ありもしない誤解を、倉間くんは笑顔で語る。その誤解も仕方はないんじゃないかな倉間くん。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -