txt | ナノ

この世界にはポケモンという生き物が住んでいて、私たち人間と仲良く暮らしている。…表向きの問題だ。本当はどうなっているんだろうと思えば世の中なかなか深い物事ばかりで、まだ上手く発達していない私の頭は悲鳴をあげそうだ。ポケモンと仲良く暮らしている人もいれば、ポケモンと共に強くなりバトルして成長する人もいれば、ポケモンを使い悪事を働いている人もいる。自分はどの枠に入る人間なのかを考えると、答えはそう簡単には見つかってくれない。あぁ日に日に増していく疑問を何処にぶつければいいんだろう。こんなにも真面目に考えたことはない。こんなことで真面目になったことなんてない。そんなとき、肩にそっと置かれた温もりある手の主を見つめる。優しい顔つきで、私を覗き込んでいた。


「…どうしたの?」
「悩んでいるの。私ってポケモンたちと、どんな風に暮らしてるのかなぁって」
「…名前はポケモンと仲良く暮らしてるんじゃないの?」
「いまいち納得出来なくてさ」


同じように難しい顔をして、レッドは悩み出した。そうだね、名前……、そこまで言って止まってしまう。私は、普通に考えられるようなポケモンとの暮らし方をしていない。だって私、自分のポケモンを持っていないんだから。レッドの手持ちのピカチュウたちとは仲が良いのに、自分の手持ちは持とうとしない。どうしてだろう。自分の問題なのに、分からなくなってきてしまったよ。


「でもレッドは、ポケモンと共に強くなった人だよね」
「…そう、かな?」
「そうだよ!だってレッド強いしね。あぁ、私レッドみたいな人に憧れるなぁ」


だけどもしレッドが今、私に「じゃあ名前もポケモン捕まえてバトルする?」と聞いてきたら、きっとそれは断っただろう。人がやるから、私は憧れを抱く。結局は第3者として、傍観者として生きてきただけの人間の贅沢。或いは人がやるのを見て満足するだけの面倒臭がり屋の呟き。どちらにせよ、私は一生経っても自分のポケモンを手にしないだろう。悔しくも哀しくもない。そもそも、考えることを止めた私に、その先の出来事なんて待ってやしないんだ。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -