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夢を見た。あなたが消えてしまう夢。私の前から。この世界から。何処にもいない。私を受け容れてくれたあなたがいない世界を見た。涙が出た。夢なのに。バカらしい。でも悲しい。意味分かんない。私が。

いつの間にかオファで寝てしまった私を見ても、ユウキ君は側にいてくれたらしい。隣で、静かに雑誌を読んでいる。今になって気付いたこと。微かにあった手の感触は、彼が握っていてくれたもの。私が寝ている間、もしかしてずっとこの状態だったのだろうか。不便じゃないかな。片手だけで雑誌読んでるなんて。聞きたかったけど、止めておいた。起きた私に気付いたユウキ君は振り返ると少しだけ笑って「起きた?」って。何か魘されてたけど、大丈夫?って。私、そんなユウキ君に心配されるような価値ないよ。ましてや、手を繋いでもらえるような人間じゃないの。

不意に涙がこぼれた。
悲しいから?
哀しいから?
違う違うのそうじゃない。分からないでも涙が出る。ねぇどうしてこんなにも今胸が痛いの。どうしてこんなにも苦しいの。あなたが私に優しくするから。微笑んでくれるから。手を繋いで引き止めてくれるから。あなたに責任を押しつけるつもりなんてないの。押しつけたい訳じゃないの。だけど、あなたが悪いんだよ。

ほらまたそうやって。名前、優しく私の名前を呼んで、髪を撫でてくれる。駄目なの。私にそんなことしちゃダメ。
触れないで。
お願い。
壊れちゃう。
ううん、違う。壊れるのは私じゃない。私とあなたの関係。壊したくない。そのままでいたい。穏やかな関係でいたいの。だから優しくしないで。私を孤独へと突き落としてもいい。続く関係を持てるなら、私はどうなってもいいの。

溢れて止まらない涙を、ユウキ君は見て少しだけ慌てた。何で君が戸惑うの。別に私が泣こうが、君には関係ない。だけどユウキ君ってそういうこと気にしてくれないよね。そっと抱きしめ、その力はどんどん強くなっていく。痛くはないよ。むしろこの時間が心地よく、愛おしく想える。

私はどうして、こんなにも自分を求めて、私も求めている人と過ごす時間を嫌悪してるんだろう。
何に対して苦しみを感じているんだろう。
答えなんて簡単に出る訳じゃない。辿り着いた先に何もないって分かってるんだから。
でもそんなの、自分に問わなくても分かる。私はずっと、怖いの。あなたの側にいられるような人間じゃない。求められるような人間じゃない。…あなたを求めていい人間じゃないの。

時々不安をうち明ければ、「そんなこと気にしなくていーよ」なんて。あなたの言葉に安心を覚えることはない。
私は何処にいっても、不安で怖くてたまりません。いっそ消えてしまえれば、こんなに悩まなくてすむのに。あなたに迷惑をかけなくてすむのに。


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