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野原に眠っている彼を見つけると、少しだけ懐かしい匂いを感じた。こんなところで昼寝なんて、季節を考えて欲しいと少しだけ呆れながら近づいていく。「風邪引くよ、ミナキさん」と呼びかけると、返答は曖昧な言葉だけ。あーあ。きっとすごく疲れているんだろう。だから本当は、無理に起こしたいなんて思わない。だけどこの場所は冷たい風がよく吹くし、放っておけない。「ミナキさん起きてください」…呼んでも起きてくれないなら、起きるような状況を作るまで。ため息ひとつ、叫んだ。


「あ、あそこに今スイクン!」
「何、何処だ?!」
「…嘘ですよ。起きましたか?ミナキさん」
「…嘘はよくないぞ名前くん」


だってこうでもしなきゃ起きてくれないでしょう。ミナキさんの手を取り、ゆっくりと歩いていく。途中ミナキさんが大きなあくびをした。やっぱり眠たいんだろうか。足を止めると「止まるな、歩け」なんて偉そうに。心配したこの気持ちは果たして杞憂か。…あぁ色々と損した気分だ。


「名前くん。君はきっと将来、いいお嫁さんになるんだろうね」
「…ミナキさん、頭大丈夫ですか?」
「そうだ僕が貰ってやろう。どうだい?」
「…結構です」


何を言い出したかと思えば、ミナキさんは疲れてどうかしてしまったらしい。しかも、“もらってやろう”なんて、正直言いたくないけどムカツク。それにそういうロマンチックな言葉って、まず好きと気持ちを伝えてからだろうに。もうホント、損した気分だけ駆けめぐっていく。


「あぁ言っておくが、僕は君のこと好きだよ?」
「…ちっとも心に響きませんよ」
「あぁ違った。分かった訂正しよう」


愛してるよ。
それだけ何でかよく響いた。やっぱり私ばっかり何か損してる。いつもいつも美味しいところミナキさんに持ってかれて…私もですよ。って怒気を晒して言ってしまったのも、きっと何もかも彼のせい。


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