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最近トウヤが部屋にこもりっぱなしで、読んでも出てこないの。やっと旅も落ち着いて、家に帰ってきても、全然しゃべらないのよ?ちょっと不自然だと思わない?名前ちゃん。ねぇお願い。トウヤの様子、見てきてくれない?
私から言わせて貰えば、自分の息子のことを私に頼む方が不自然だと思うんだけどなぁ。でもトウヤくんと最近しゃべってないのは私も同じ。トウヤくんのお母さんが少し心配するのも分かる気がする。コンコン、と2回ほどノックして声をかけた。「トウヤくん、いる?入ってもいい?」でも返答はなかった。怒られないことを願って、トウヤくんの部屋に踏み込む。明かりは点かず、真っ暗な空間が私の目の前で広がっていた。もう一度呼ぶ。トウヤくん。…返事はない。


「トウヤくん?いるんでしょ?」
「…いるよ」
「じゃあ返事してよ」
「…うん」


元気のない声に戸惑った。どうしたの、トウヤくん。大丈夫?なんて聞けない。そばに駆け寄り、やっと言えたひとこと。何かあった?何もないよとしか答えないのは知ってる。トウヤくんが私に大事なこと話してくれないのはいつものこと。ねぇでもトウヤくん。抱え込まないでよ。


「…俺、早く幸せになりたい」
「え、」


幸せっていうのは気付かない家に在るもんじゃないのかな。だからなりたいとかいう問題じゃないと思うけど…今のトウヤくんは幸せを感じてないみたい。今ここに在ることを幸せって思わないのかな。


「トウヤくん。幸せになること急いじゃダメだよ」
「…」
「さびっしくなったら、言ってよ」
「…ごめん。ちょっと一人にして」


うん、としか答えられない情けない状況で、私は部屋を出ていくことしかできなかった。独りなんて寂しいだけだよ、一人でも、私はさびしいよ。人に依存することで生きてきた私じゃ、トウヤくんのこと理解できない。一人で旅に出れたかもしれないけど、私は怖くて出来ない。だからこそ、人を独りにしたくなくて、余計に拒絶されるのかもね。でもねでもね、本当は助けたいの救いたいの。悲しそうなあなたの横顔を、少しでも笑顔に返られたらと願ったの。でも無理みたい。





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