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11月11日はポッキーの日なんだよ、なんて友だちから聞いたのはその日の朝だった。ホームルームが始まろうとしているなか、そのことだけが頭の中をぐるぐると回っている。悩んでいるわけでも、何かしようとしているわけでもない。ただポッキーの日だからと言って、特別なことがないことに少しだけ寂しい気持ちがあるだけ。今日学校では普通に授業があって、部活があって、記念日っぽくない。あぁなんか楽しいことないかなぁ……。
ふと目線を動かした先、丁度そこにいたのは付き合って間もない彼。何で私みたいな地味な存在が、倉間くんとコイビトという関係でいられるのだろう。時々不思議に思ったり、不安に思ったり、私は毎日大変だよ、倉間くん。
すると目が合ったからなのか、倉間くんが近づいてくる。手には箱のようなものを持っているみたいだけど、あれ何だろう。私の目の前で立ち止まると、それをいきなり突き出す。少しだけ、びっくりした。


「これやるよ」
「な、何これ?」
「ポッキー。今日、ポッキーの日だし、名字にやる」
「あ、ありがとう」


ぎこちないお礼だったけど、倉間くんは満足そうな顔をして、自分の席に戻っていった。もらったポッキーをかじると、ほんのりとチョコレートの味が口の中で広がる。おいしい、何だろう。すごく心が温かかった。そっと感じる甘い味も気持ちも、きっと全部倉間くんがポッキーと一緒にくれたもの。


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