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漫画好きの私から見れば、マサキの家は宝島のような場所だった。マサキの家には私の大好きな漫画がいっぱいあって、マサキが仕事して相手してくれないとき、私はいつものように漫画を読みふける。この前は熱中しすぎて、「無視すんなや!」って怒られたっけ?都合のいい人だ。
今日もマサキの家に遊びに行った。だけど彼は仕事だった。仕方ない話だと分かっていて、私は本棚から漫画を取り出す。パソコンをカタカタと鳴らす音だけが、私の行動へ相槌を打った。





「なぁお前いつまで読んどるん?」
「…まだ30分だよ」
「アホ抜かせ。もう3時間や3時間!お前よくそんな長い時間読んどれるなぁ」
「楽しいんだもん」
「わいには分からへんわ」
「マサキの家ってさ、少女漫画多いよね」
「は?」


呆けた声が部屋に響いた。沈黙が生まれる中、少しずつだけどマサキの顔が赤くなっていく。あれもしかして照れてる?少女漫画多いよねって言われて、恥ずかしい?それとも悔しいの?わいは男やっとか言うの?


「それは母親が集めたもんや。言っとくけど、わいの趣味ちゃうで」
「ふーん」
「何やその返答!お前分かってへんやろ!」
「マサキって誤魔化すの必至だね」
「誤魔化してへんわ!それわいのものちゃうで!」
「はいはい」


そんなの知ってるし。だってマサキのお母さんに聞いたもん。「ねぇ名前ちゃん、名前ちゃんは少女漫画すき?私昔集めてたのよ。マサキと一緒にいてもつまらないだけだし、それ読んで暇でも潰してちょうだい」って。そんな面倒くさいことやるくらいならマサキの家になんて行かないけど、私彼女だから。マサキのこと好きだから、一緒にいたいと思うからくるんだよ。


「なんか少女漫画ってさ、告白し両想いになると一気にキスの回数増えない?」
「…は、何言うてんねん」
「私たち付き合ってるけど、キスなんてしないよね」
「お前何が言いたいんや?」
「ベタベタなのはあんまり好かんなぁと」


私たちだって付き合いだした頃、手を繋ぐことしかしたことない。ましてやキスなんて全く。そりゃ昔の私だったらしたいだのやりたいだの騒いでマサキを困らせたんだと思うけど、今はもうそんなこと思わない。

むしろ今の付き合いが心地よく思える。お互いにとって不満も求めることもなく。いや求めることがなくなったら流石にだめだけど。でも時々一緒にお出かけできればいいと思ってしまう。

だから変にキスしたいとか思わなくなった。別にマサキに少女漫画に出てくるイケメンの男の子になってほしいとも思わない。私たちは、私たちのやり方で求め合えばいいと思うんだ。


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