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噂とは怖いものである。私自身がまだ受け容れられていないような事実を勝手に流してしまい、どんどん広まって、最終的に困るのは私。時に許せなくなるようなこともあるけど、相手が相手だと、怒る気がなくなってしまう。許しちゃうとかじゃなくて、私が怒ると逆にその後の反応が怖いから。普段温厚な分、ひっくり返るとどう転がるのだろうか。悩もうとは思わない。ただ、ホンット噂って怖いんです。

「名前、お前倉間のこと好きなんだって?」
「な、何のことですか」
「隠さなくていいよ分かってるから。で、告った?」
「こここ告ってませんよ!」

にやにやと嬉しそうな顔してことを進めていく水鳥さんは、私が倉間くんに恋してるとかまだ確かでもない情報を信じている。もちろん、犯人が茜ちゃんだってことは分かってる。絶対、部活の時に言ったんだ。絶対、面白半分だよ茜ちゃんは!
それで朝登校したらいきなり「名前、私も協力してやるからな!」だもん。びっくりだ。それ以前に私と水鳥さんって、蛇と蛙のような関係じゃなかったけ?もしかして、私が一方的に怖がってるだけかもしれないけど。っていうか協力するって、何をするんだこの人は。私に何をさせるつもりなんだ。

「お前と倉間ってさ、何か余所余所しいんだよ。友だちとか言ってたくせに」
「ちょっと待って水鳥さん。私あなたに倉間くんと友だちなんて言ってないよ。何処から聞いたの?茜ちゃん?」
「もっと親しみやすくするために、今日からお前ら一緒に登下校な」
「待って、勝手に決めないで!というか、私の話聞いて!」

ダメだ。完全に私の意見は無視され、水鳥さんは勝手に話を進めだしている。ブツブツと何か呟いて、それを上手く聞き取ることは出来ない。っていうかこれから一緒に登下校って…倉間くん起きるの早いからなぁ。時々偶然会うけど、あんまり喋らないし。…あぁ、だから余所余所しいって言われちゃうのか。一人で納得した瞬時、肩に重い圧力がかかる。水鳥さんの強い力がのし掛かってきたみたい。手に籠もった力が直に肩に掛かって痛い。しかも若干、水鳥さんの目が怖い。にこにこした顔で、私にそっと言ってのける。

「名前、お前明日倉間の差し入れとして、レモンの蜂蜜付けでも作ってこい」

さぁ大変なことになったぞ。


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